こんにちは、アンリーシュライターのこずえです。
連載「療育の現場から」、第3回目のテーマは「重症心身障害児の療育について」です。
重症心身障害児の療育を仕事としている私の立場から、前編・後編に分けて詳しくお伝えしたいと思います。
前編の今回お伝えする事は、「重い障害がある子どもが療育に通うといいこと」です!
重症心身障害のあるお子さんは、日常生活のすべてにおいて助けが必要です。
そんなお子さんたちが療育に通う意味ってなんだろう、どうやって遊ぶんだろう、などの疑問を持つ方もいらっしゃると思います。
療育の場面だけでなく、おうちでご家族がお子さんと過ごす場合でも役に立つこともあるので、ぜひ今回の記事を参考にしてみてくださいね。
目次
重い障害がある子どもが療育に通うといいこと
子どもの生活リズムが整いやすい
重い障害のあるお子さんは、生活リズムを整えることが難しい子が多いです。
てんかん発作や呼吸障害で、眠たくても眠れなかったり、眠りが浅かったり、疲れて日中眠ってしまったりという子も多いかと思います。
特に小さい頃は、ほとんど1日中眠っているお子さんがいるかと思えば、逆にずっと泣いていて全然寝てくれないお子さんもいます。
昼夜逆転も珍しいことではありません。それに付き合うご家族も大変です。
そんな時、朝になって決まった時間に出かける場所があるというのは、生活リズムを作ることに役立ちます。
最初は、準備をするのも大変だし、実際に出かけていっても子どもは寝てばかり…ということがあるかもしれません。
でも、騙されたと思って続けてみてください。(もちろん、疲れた時は休んでくださいね)
朝、お日様の光を浴びて、日中いろんな活動をすることが、生活リズムを少しずつ作っていきます。
生活リズムが出来上がるまで数年かかる子もいますし、生活リズムができてきたと思えばまた昼夜逆転してしまうこともありますが、必ず、少しずつ変わっていきます。
そうすると、家族の生活も安定しますし、健康を維持するのにも役立ちます。
その子の持っている力を伸ばしてあげるための基礎になるところです。
子どもに体力がつく
おうちにいるよりもたくさんの活動をすることで、徐々に体力がついてきます。
抱っこや座りやすい椅子に座るだけでも、ベッドやお布団に横になっているよりもたくさんの力が必要なのです。
それに加えて、見たり、聞いたり、何かを作ったりといろいろな活動をします。
最初は子どもたちにとっては、結構な運動量になるので、徐々に慣らしていきます。そうすることで自然と体力がつき、健康な身体づくりにも役立ちます。
子どもの発達の基礎的な部分を作る
文部科学省から、「子どもの発達段階ごとの重視すべき課題」というものが示されています。
その中で、乳幼児期における重視すべき課題は、
- 愛着の形成
- 人に対する基本的信頼感の獲得
- 基本的な生活習慣の形成
- 十分な自己の発揮と他者の受容による自己肯定感の獲得
- 道徳性や社会性の芽生えとなる遊びなどを通じた子ども同士の体験活動の充実
とされており、重い障害がある子どもたちでもこれは同じです。
特に愛着の形成、人に対する基本的信頼感の獲得、生活リズムの形成も含めた基本的な生活習慣の形成は、その後の発達の土台になります。
療育に通うことは、親子通園であっても子どもだけで通う場合であっても、家族以外の人と過ごす最初の経験になります。
家族以外の人と愛着や信頼を育むこと、集団生活としての生活習慣を形成していくことは家庭だけでは難しく、療育に通う大きな意義となります。
その土台があってこそ色々な経験を積み重ねながら、その子の持っている力を伸ばしていくことができるのです。
その子の持っている力を伸ばす
その子の持っている力を伸ばすというと、リハビリをイメージするかもしれません。
それは間違いないのですが、一般的にリハビリは週に1回、1回あたりの時間は40分程度です。
また、訪問リハビリ以外は、病院等の特殊な環境で行います。リハビリの効果を上げるには、日常生活で目的とする活動を取り入れて実際に行うことが大切です。
もちろんそれを家庭生活の中で行うこともいいことで、ぜひ取り入れていってほしいところですが、療育の場面でも取り入れることができます。
施設によっては理学療法士や作業療法士などがスタッフとしているところもありますし、そうでなくても保育士や看護師も発達を伸ばすという視点で関わります。
リハビリに通っているだけではもったいない!のです。
個人的には、重症心身障害児も療育は、楽しいだけで終わってはいけないと思っています。
楽しく快適に過ごすことは当たり前で、そこから子どもたちがその子らしく育っていくための支援をするのが療育の役割で一番大切なところです。
保育も療育も、本来は子どもを育てている場所
いかがでしたか?
残念なことに、保育も療育も、「子どもを預かって見てくれる場」と見られることが多いのですが、本来は、専門的知識や技術に基づいて子どもたちを育てている場所です。
それは障害があってもなくても同じ。
その子らしい育ちを支えていくという意味で、重症心身障害児では今回書いたような部分を育てていくのです。
後編では、実際にどんな風に遊んでいるのかをお届けします。お楽しみに!