こんにちは。医療的ケア児コーディネーターの増子邦行です。
災害が多い日本。地震や集中豪雨等、いつ発生してもおかしくないといわれています。今回の記事では、防災の準備やシュミレーションの参考となる情報をお届けします。
安心で安全な暮らしにつながっていけば幸いです。これを読めば “だいじょうぶ!”です。
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【防災冊子】こどもの命を守る 医療的ケア児の防災マニュアル お家でできること8選
お名前:増子邦行
経歴:認定NPO法人フローレンス(医療的ケア児コーディネーター)
NPO法人フローレンス・ナンシー https://nancy.florence.or.jp/
医療的ケア児コーディネーターまとめサイトhttps://kodomoday.jimdofree.com/
目次
「不安です。。」みなさんの声
今回、SNSで「災害について何が心配?」という簡単なアンケートを取りました。その結果、
- 災害時の避難方法
- 電源の確保
- お薬や医療物品の準備について知りたい
といったお声が集まりました。
過去の震災から学ぶこと
過去の震災、特に阪神淡路や東日本大震災などの大規模災害では、自治体の安否確認や救援活動が機能しない問題が起こりました。
また、長時間の停電や断水などライフラインに障害が生じても、1~2週間は自宅で過ごさなければいけないケースもあることもわかりました。
これらを想定し、医療的ケア児の防災で特に重要なのは、
- 非常用電源の確保
- 医薬品・医療材料の備蓄
- いざという時の避難場所や経路の確認
です。
2016年の熊本地震では、あらかじめ登録している病院へ避難するシステムができており、震災翌日には7割の医療的ケア児が病院に避難できたそうです。また、福祉避難所も設営され、医療的ケア児全員が無事に避難できています。
電源を確保しよう
停電により医療機器の電源が確保できないことは、生命の維持に支障をきたします。もしも停電が長時間続いた場合、どうやって電源を確保するのかを考え、準備しましょう。
東京電力パワーグリッドへの登録
関東在住の方は、東京電力パワーグリッドに医療機器を使用している旨を伝え、事前に登録しましょう。
停電発生時、復旧に時間がかかりそうな場合は、東京電力パワーグリッドより停電状況の確認の連絡が入ります。※大規模停電の場合は、停電復旧が優先されます。
連絡先:0120-995-007
コールセンターで「在宅医療のおうちです。停電時の緊急連絡先を登録したい」旨をお伝えください。 担当部署の方から折り返しお電話があります。
(登録時に伝えること)
- お住まいの住所 ※違う電気会社に契約していてもOK。
- ご家族のお名前
- 医療機器を使っているお子さんのお名前
- 在宅医療機器のバッテリー時間 ※電源を使う在宅医療の機器であれば、どの種類でもOK
- 緊急連絡先電話番号
また、電源の確保が困難な場合は、東京電力パワーグリッドより可能な限り小型発電機が貸し出されます。貸し出しの発電機はガソリンタイプとなり、屋外での使用できる方にお貸しをしているそうです。
※大規模震災によっては難しい場合もあります。ご自身でも予備のバッテリーを準備することが望ましいです。
非常用電源の確保
緊急時に備えて、非常用電源を確保しておきましょう。
専用の外部バッテリー
- 着脱可能なバッテリーの場合は、予備を用意しておきましょう。
- トリロジー(人工呼吸器)の着脱式バッテリーは、約50,000円で販売しています。1か月おきに充電が必要です。経年劣化に注意(保証期間2年)。
市販の蓄電器
- 常にコンセントつなぎ充電しておきましょう。自然放電で劣化する場合があるので注意。
- 蓄電器の購入時は「定格容量、発電時間、電力300~500W、周波数50/60hz」を確認。
- 正弦波インバーターの有無、「バッテリー寿命・保障期間」を確認。
カーインバーター(正弦波)
- カーインバーター使用中は車から離れないことが大事です。
- 長時間の使用は、コード等に熱が持ち火災の発生のリスクがあります。
- 蓄電池やバッテリーの充電に使うことが望ましいです。
- 人工呼吸器と直接接続すると故障する可能性がありますので注意して下さい。
発電機
- カセットボンベとガソリンタイプがあります。どちらも騒音や異臭がでるので、屋外等で使用するなど換気に十分注意しましょう。
- 騒音については周囲への配慮も大切です。
- 定期的なエンジンオイル交換等のメンテナンスを年1回は行いましょう。
- 人工呼吸器ユーザーに自家発電装置費等の助成をしている自治体もあります。(中央区、北区、目黒区、足立区、立川市、八王子市)
医療的ケアごとに停電対策を!
停電に備えて、ベッドの近くにはアンビューバックや懐中電灯・スマホを置いておきましょう。各部屋にも懐中電灯を用意しておきましょう。
人工呼吸器
- 人工呼吸器専用外部バッテリーが何時間使用できるか確認する。
- 外部バッテリーや外部電源を十分に用意する。
吸引器
- バッテリー内蔵の吸引器を用意しておき、常に充電する。
- 予備の吸引器や、足踏み式や乾電池式の吸引器も用意する。
加温加湿器(人工呼吸器用)
- 長時間加温加湿をしないと冷たい空気を吸い続けて、体調悪化の原因となる。
- 人工鼻フィルターに切り替える。ホッカイロを貼って加温加湿器を温める。
酸素濃縮機
- 動作が停止するので、酸素ボンベに切り替える。
- 災害時に対応できる量を考えて、普段から酸素ボンベを用意する。
- バッテリー内蔵タイプや、設置型液体酸素に変更する方法もある。
防災リュックを作ろう
医薬品や医療材料の備蓄
- 普段から、最低でも1週間分(できれば2週間分)を備蓄しましょう。
- 備蓄品は分散させる。ベッドの近くに7日分、車いす(バギー)に 3日分、防災リュックに7日分など、分散してまとめましょう。3ヶ月おきに期限を確認しましょう。
- おくすりや経腸栄養剤(工ンシュアやエネーボ等)は、おくすりの説明書と一緒に保管しておきましょう。
- 主治医、薬剤師、訪問看護師にも、災害時の使い方や保管方法などを相談して下さい。
家族の食料の備蓄
- 食料や水、日用品は1週間分以上を備えておきましょう。
災害によっては、外に避難せずに在宅避難をする場合もあります。食料は避難所(学校等)で配られることから、食料を取りに行けない場合にも備えておきましょう。
- 食料は普段からストックを意識しましょう。
食料は災害用非常食(乾パン、アルファ米) 以外にも、日頃から使う食材に保存がきくもの(缶詰、乾麺、レトルト、フリーズドライ、乾物等)を多めに常備して、古いものから食べてローリングストックしていきましょう。
移動用の担架の準備
避難時に便利な抱っこ具も市販されています。
災害時に役立つグッズを揃える
- 自治体の防災マップ(自治体ホームページからダウンロードできる)
- ヘッドランプ型やランタン型のライト(両手が使えると、暗やみでも吸引できる)
- モバイルバッテリー
- 災害ラジオ(手回し、乾電池式、地デジ対応ラジオ)
- ふろしき、大判の布(物を包んだり、簡易トイレ使用時の目隠し用)
- カセットコンロ、ボンベ(カセットボンベ1本=60分使用可能)
- クーラーボックス(冷蔵庫代わり、お湯を入れての予備調理)
- 給水袋やポリタンク(給水車などから水をもらう際に使用)
- ホッカイロ(加湿器の保温にもつかえる)
- 手回し充電器(携帯電話やスマホの充電)
- 予備のメガネ
- 蚊取り線香
災害に備えて整えておこう
携帯電話(スマホ)の設定
- 災害用伝言ダイヤルを使えるようにしておく
電話帳に「171」を入れておく(利用方法はこちら)
災害用伝言板をブックマークする(https://www.web171.jp/)
- 自治体の防災アプリを入れておく(例:東京都防災アプリ)
- 気象庁防災情報をブックマークする https://www.jma.go.jp/bosai/
- キキクル(気象庁が公開している危険度分布の無料情報サイト)をブックマークする。
- 国土交通省防災情報をブックマークする https://www.mlit.go.jp/saigai/bosaijoho/
- LINE(電話がパンクしてもネットはつながる場合がある。既読がつく。)
- 自治体の防災情報メール配信に登録する
- 自治体の公式SNSに登録する(Twitter・Facebook・LINE等)
室内環境
お部屋の環境を整えておきましょう。家具の転倒防止は、ケガだけでなく医療機器の破損防止にもなります。
家具の配置も注意して、部屋の入口が塞がれないように気を付けましょう。
- 家具を固定する。
- 頭上に物をおかないようにする。
- 窓ガラスが割れて飛び散らないようにフィルムやテープを貼る。
- ベッドのキャスターはロックしておく。
- 医療機器の下に滑り止めシートを敷いておく。
- 呼吸器回路の破損に備えて予備を用意しておく。
- コンセントのアンペア数が守られているか確認する。
- 肢位調整のクッションやバスタオル(停電すると電動ベッドのギャッジが変えられない)
避難所について調べよう
基本的には自宅避難が安全と言われていますが、大規模震災の場合は、建物の倒壊や火災のリスクがあります。普段から避難できるように備えておきましょう。
防災マップで避難所の場所を調べる
- 通常は、最寄りの小学校や中学校が避難所となっています。
- 避難所では食料品や水などの配給があります。
- 自宅が震災した場合に寝泊まりができます。
- 福祉避難所の場所も確認しておきましょう。子どもや障がいのある方は、衛生環境のよい福祉避難所で受け入れを行っている場合があります。
避難経路の確認
- 避難訓練を兼ねて、実際に避難所まで行ってみましょう。
- 自宅から避難所までの経路や移動手段を確認します。
- エレベーターが停止した場合に備えて、非常階段の場所を確認しておきます。
実際の避難方法について
- 人工呼吸器や酸素、吸引器の積み替えがあり時間がかかります。実際に時間を図って練習してみましょう。
- 場合によっては命を最優先して、アンビューで換気をしながら体ひとつで逃げることも大事です。生き延びるための最大限の努力と覚悟も必要となりますので、避難方法をシュミレートして準備、訓練を行いましょう。
関係機関とのつながりをつくろう
相談支援専門員さんや訪問看護さん、地域の保健師さんとつながりを持つ
定期的な来訪時に、お子さんの日常の状態を把握してもらったり、役所で会った時に近況を報告したりしましょう。
サービス担当者会議では、日頃の生活の実態を知ってもらうことが大切です。その上で、災害時の様々な場面を想定して、具体的な避難方法を検討しましょう。
サービス担当者会議での検討事項
- 災害時のSOSの連絡方法
- 災害の規模によって、自宅避難にするか、避難所に移動するか話し合う
- 避難する場合は、どこに誰と避難するか
- 電源の確保
- 避難中の医療機器や医療物品を確保する手段
- 災害時の介助者の確保
- 長期の避難となった場合どうするか
- 防災マップをみながらイメージトレーニング
- 171災害伝言ダイヤルの練習(毎月1日と15日にお試しができる)
東京都北区 人工呼吸器使用者向災害時個別支援計画の作成の手引、様式集
http://www.city.kita.tokyo.jp/s-fukushi/kenko/shogai/shienkekaku.html
※人工呼吸器ユーザー向けの資料ですが、医療的ケアが必要な児童も参考になります。
自治体の避難行動要支援者の名簿に登録する
大地震などの災害が起こったときに、自力で避難することが難しく、支援を必要とする方々を、あらかじめ登録しておく名簿です。災害時に声をかけてもらえるなど、支援を受けられる可能性が高まります。地域の避難訓練や防災活動にも活用されます。
登録方法は自治体により様々です。自動で登録されていることもありますが、申請して登録が必要な場合もありますので、お住まいの自治体にご確認下さい。
いざという時に備えてヘルプカードを作成しよう
ヘルプカードとは、災害時や困った時にお願いしたいことを伝える「トリセツ」です。ひと目でわかりやすく伝えることができます。
必要な項目に入力するだけで簡単にヘルプカードが作れるサイトを作成しました。ぜひご活用ください!
医療的ケア児等医療情報共有システム(MEIS)
医療的ケアが必要な児童等が緊急時や予想外の災害、事故に遭遇した際に、全国の医師、医療機関(特に救急医)等が迅速に必要な患者情報を共有ができます。
登録には主治医による入力も必要となりますので、主治医にもご相談ください。
以上が医療的ケア児の防災情報でした。
盛りだくさんでしたので、少しずつ準備していきましょうね。これでもう “だいじょうぶ!”です。