東京都世田谷区に、日本初の「インクルーシブ公園」が2020年3月末に開園しました!
この公園はスペシャルニーズがある子も安全に遊べる遊具があり、「障害がある子もない子も一緒に遊べる」公園になっているのです。
障害がある子もない子も一緒に遊べる!【インクルーシブ公園】を知っていますか?
実はこの公園ができたきっかけは、ひとりの東京都議会議員の提案からでした。
彼女の名前は龍円愛梨(りゅうえん・あいり)さん。
21トリソミー(ダウン症候群)の息子さんを育てるママでもある龍円さんに、日本初のインクルーシブ公園にかける想いをお聞きしました。
目次
インクルーシブ公園を作ろうと思ったきっかけ
私は息子が2歳になるまでアメリカに住んでいました。
当時、自宅からすぐのところにあった公園によく遊びに行っていましたが、そこはスペシャルニーズがある子も遊べるように配慮された公園だったのです。
アメリカにはそういった公園が当たり前のようにありました。
でも、日本に帰ってきたら、息子を安全に遊ばせられる公園はどこにもなかったんです。
日本には、子どもが遊びながら成長するために必要な公園が、ちゃんと整備されていないなと感じました。
それが、インクルーシブ公園を提案したきっかけです。
公園の整備が進むにつれ、担当者に嬉しい変化が
実際に提案から公園のオープンまで2年ほどかかっているようですが、その間大変だったことはありますか?
実際に公園の整備を行うのは東京都建設局です。ですが当初、建設局にインクルーシブ公園についてのノウハウが全くありませんでした。
建設局の担当者さんが、ご自分の回りにスペシャルニーズの子がいないし、そもそも関わったことがない。なのでどんなニーズがあるのかわからない、どこから手をつけていいのかもわからないという状態だったのです。
実際に公園に行くのは、小さいお子さんがいるママたちですよね。
なので病児や障害児、医療的ケア児を育てるママたちにニーズをヒアリングをしてもらったり、「みんなの公園プロジェクト」という、インクルーシブ公園のノウハウがある団体を紹介したりして、2年ほどかかって完成しました。
手探りで公園整備を進められていく中で、印象的だったことはありますか?
素晴らしいなと思ったのは、プロジェクトを進めていくうち、建設局の担当者さんの態度や理解がどんどん変わっていったんですよ。
初めは正直やらされてる感が満々で、何をしたらいいのかもわからない…という状態だった担当者さんが、いろんな人と会って話をするうちにだんだん理解が深まっていかれました。
そして、最終的にはすごく誇りを持って、公園を完成させるために頑張ってくれたんです。
今は私よりも「こういう子はこういうニーズがあって」とわかってくれているぐらいです。
それは本当に素晴らしいですね!
実際にオープンしたインクルーシブ公園!行ってみた感想は!?
実際に公園が完成されて、行ってみた感想はどうでしたか?
公園がオープンしてすぐに息子と行ったんですが、すごく嬉しいエピソードがありました。
体をしっかり固定できるブランコがあるんですが、私たちがその順番待ちをしていた時です。
私の前で、足の装具を着け、松葉杖を使っていた子がブランコに乗りました。
その子がどんな表情をするのだろう?と思って見ていたら、ピューン!って飛んだ瞬間に、キャーーーって、すごーく嬉しそうに喜んだんです!
それを見た瞬間に目がウルウルっとして泣きそうになっちゃいました。
ああ、このお子さんにとって、ブランコに乗るということが日常的ではなかったんだと思いました。
それから、私の後ろに並んでいた男の子が、お母さんにこう聞いたんです。
「ねえねえこの公演は、障害のある子のための公園なの?障害のある子しかこのブランコは乗っちゃダメなの?」
って。
私は、お母さんは何て答えるんだろうって思って聞いていました。
お母さんは、
「この公園は、障害がある子もない子もみんなが遊べる公園なんだよ、みんなのための公園だから、ブランコに乗れるんだよ」
って答えていて、それを聞きながらまたウルウルって泣きそうになりました。
私はこういう会話を聞きたくてこの公園を作ったんだと思って、嬉しくなりました。この公園で、親子の間でもっとこういう話がされたらいいなと思いました。
都内のあちこちで、公園整備に向けて動き出している
この動きは、日本全国に広がってほしいと思っています。
最近、東京都北区でもインクルーシブ公園の整備が決定しました。
これは都民ファーストの会の議員が区議会で提案したものなんですが、普通は小さい会派の政策は実現されにくいものなんです。
ですが、今回はぜひ整備しましょうとなった。
インクルーシブ公園というものが、今までアイデアとして行政の中になかっただけなんですね。
言われてみれば確かに必要ですね、と思ってくれる人は多いので、提案があれば全国に広がってくれるんじゃないかと思っています。
また、東京都多摩市でも整備に向けての動きがあります。
こちらは、議会での提案ではありません。
私のブログを見てくれたひとりのお母さんが、何度も多摩市の公園課に通って提案し続け、それを受けて行政が動きそうになっているんです。
お母さんが行動しているのは素晴らしいですね!
今回東京都は、インクルーシブ公園を作るために1年かけて情報を収集しました。そこで得たノウハウを、他の自治体に全て提供してほしいと私は伝えています。
それを受けて、豊島区や渋谷区が、今年度インクルーシブ公園を作ると言ってくれています。
インクルーシブ公園の整備には、普通の公園の3倍ほどのお金がかかります。
ノウハウを無償で提供し、東京都にも助成金を検討してもらうことで、この先もっとインクルーシブ公園が増えるといいなと思っています。
龍円あいりさんが、医療的ケア児支援で取り組んできたこと
龍円さんは、医療的ケア児の支援としてどんなことをやって来られ、またこれからどんなことをされていこうとしているのでしょうか?
一番力を入れてやってきたのは、お母さんの付き添い問題です。
医療的ケアのあるお子さんが学校に行くのに、お母さんが一緒に学校まで付き添わなければならない。それが12年間続く。
当たり前のようにそれが行われていて、許せないなと思っています。
医療的ケアのあるお子さんは通常よりも色々とお金がかかるし、この先も親元でずっと面倒をみる可能性がある中で、付き添いのために仕事を辞めろと言うのはあまりにも暴力的な差別だと思います。
これは「保護者が付き添えないなら学校に来るな」と言われているのと同じことで、現代の日本において、学校に来るなと言われている子供たちがいるのが信じられません。
しかも、保護者が付き添えるか付き添えないかという、教育とは全く、何の関係もない理由で。
医療的ケア児の保護者の付き添い問題は、本当にあり得ないことだと私も思います。
私はこれを3年間ずっと訴え続けてきました。
最初は教育の担当者の方がぽかーんとしていて、「何を言っちゃってるのあなたは?」って感じだったけれど、「ではあなたのお子さんが病気で、明日から人工呼吸器を使用した場合、あなたは仕事をおやめになりますか?」と聞いたら、「辞めません」と。
「じゃあお子さんに、『もう学校に行くことは諦めろ、なぜなら人工呼吸器があるから』と言うんですか?」と尋ねたら、「それは言えません」と。
「ならば、なぜ自分の子供に言えないことを人のお子さんには言うんですか?」と、そういったやりとりをたくさんして、やっと最近、医療的ケア児の通学バスが東京都にできました。
自分たちの子どもの世代が、インクルーシブな社会になっていることを目指して
私は、地域のお子さんはみんな地域の学校へ行くべきだと思っています。病気や障がいによって分断されることなく、共に育ってほしいなと思っているのです。
現在、自宅学習と通学では、教育のカリキュラムも違ってしまっています。
この問題の根本原因の一つとして、今の大人は分離教育で育ってきているからというのがあります。
ダイバーシティとか言われているけど、人の心の中にインクルーシブが育っていないと意味がない。
ですが、小さい頃からインクルーシブな環境で教育を受けていれば、スペシャルニーズがあってもなくても一緒に生きていくのが当たり前になります。
自分は子どもより先に死ぬから、子どもを社会に残すことになります。その時に、インクルーシブな社会になっていれば少しは安心です。
なので、これから生きていく子供たちの社会を変えていきたい。
そう思って、私は活動しています。
インクルーシブ公園は、本当に素晴らしい取り組みだと思います。
まずはこういった公園を通して、人々がインクルーシブな心を持つこと。とても大切だと思いました。
インタビューに応じて頂いた龍円あいりさん、ありがとうございました!
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この公園ができるまで、日本には「インクルーシブ公園」という言葉すらありませんでしたが、それを日本に作ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?