【インタビュー】横浜市が医療的ケア児ママと協力!「画期的なパンフレット」ができた理由とは?

こんにちは、なおこです。

横浜市が2020年4月に発行した、「医療的ケア啓発パンフレット」が、かわいいイラストがたくさん載っていてすごくわかりやすい!という記事を以前書きました。↓

横浜市の「医療的ケア啓発パンフレット」が超わかりやすい!内容を紹介します。

今回は、このパンフレットを発行した横浜市のこども青少年局にお伺いし、横浜市の医療的ケア児支援の取り組みについてお話を聞いてきました!

正直、行政が発行したとは思えないほどかわいいこのパンフレット。

発行の裏側には、横浜市の医療的ケア児支援へ向けた様々な想いがあリました。

横浜市の「医療的ケア啓発パンフレット」製作の経緯

取材は、2020年4月に竣工したばかりの、横浜市新庁舎で行われました。

インタビューに応じて下さったのは、横浜市こども青少年局の浅野美和さん、岩田眞美さん、横浜市医療的ケア児者等コーディネーターの北島美樹さん、そしてパンフレットのイラストを担当された、ご自身も医療的ケア児を育てるママの木島理恵さんです!

向かって左から、木島さん、北島さん、岩田さん、浅野さん、私

 

ーーーこのパンフレットは本当に絵がたくさんあってかわいいですね。まずは製作の経緯を教えて下さい。

浅野:このパンフレットは、「医療的ケアや、ケアが必要な人について知ってもらう」ことを大きな目標に作ったんです。

きっかけは、横浜市で「防災文化祭」というお祭りをやった時のことでした。

これは、在宅療養児(家で医療的ケアなどをしながら生活する子ども)を、地域全体で支援できるよう、そのサポートをする目的で開催しました。

そのお祭りに参加してくれた地元の方が、「こういう生活をしている(医療機器が必要な)子たちがいるとは知らなかった。自分もまだまだできることがあると思う。知ることができてよかった」

と言って下さったんです。

岩田:横浜市には18の区がありますが、各区にケースワーカーや保健師がいます。ですが、そのケースワーカーなどでも、実はまだ医療的ケアについてよく知らない場合があるのです。

その理由は、ひと昔前までは在宅で行う医療的ケアは胃ろうだけとか、まだそこまで高度なケアを家で行うケースは少なかったからです。

ですが今は、呼吸器をつけた患者さんも在宅に移行し、家で人工呼吸器管理などの医療的ケアをしながら生活する子も増えてきました。

そういった高度な医療的ケアを必要とする方が在宅に移行するようになって、まだ10年ぐらいなのです。

なので、現場で関わる行政側の人間でも、医療的ケアを知らない人がいます。

そこでまずいろんな方に「医療的ケアって何?」を知ってもらい、「医療的ケアがある方が、在宅でこんな生活をしてるんだよ」っていうのを知ってもらいたいと思ってこのパンフレットを作ったんです。

 

ーーー医療的ケアを知らない一般の方だけじゃなくて、支援する側の人にも見てもらうという目的があったんですね。

浅野:医療的ケア児は、「医療的ケアがある」ことを理由に、保育園や施設になかなか受け入れてもらえないんです。

ある医療的ケア児を受け入れている保育園に話を聞いた時、やはり最初は「医療的ケアが怖かった」と言われたんですね。

実際は医療的ケアと言ってもいろいろだし、必要なケアはお子さんによって全然違うんですが、知らない人にとってはどんな医療的ケアも同じで、とにかく「医療的ケアは怖いものだ」というイメージがあるんですね。

岩田:子どもによって、こういうケアをしているから、この子はここに気を付けなければいけないというのは違ってきます。逆に医療的ケアがなくても、気をつけないといけない子もいますよね。

「その子を1人のお子さんとして見たときに、何に注意したらいいのか」が具体的に違うだけなんです。

それをしっかり伝えていけば、受け入れる側も、「なんだそれなら自分たちにもできるね。じゃあ受け入れようよ」となるんです。

だからこのパンフレットは、医療的ケアについてもっと知ってもらうために、保育園や福祉施設、訪問看護ステーション、普通学校や支援学校などの、いろんな機関に配っています。

パンフレット製作で大切にしたこと

ーーーパンフレットを製作する上で大切にしたことなどはありますか?

浅野:「医療的ケアって何?」「医療的ケア児の生活ってどんな1日?」というのを知ってもらうことを目標に作ったので、とにかくいろんな人に持って行ってもらわないことには始まりません。

なので、パッと見た時に絵があると、手に取ろうかなと思ってもらえるんじゃないかと思いました。

実は、絵を入れたきっかけは、横浜市の在宅医療の医師である片岡愛先生という方が、「こんな絵を描いてくれる人がいるよ!」って木島さんを紹介してくれたことなんです。

イラストを担当された木島さん。ご自身も医療的ケア児を育てるママです。

浅野:木島さんの絵を見て、この方にお願いしようと思いました。それでこちらから連絡をさせて頂き、このパンフレットが出来上がったんです。

 

ーーー絵がすごくかわいくて、正直、行政が作るパンフレットのイメージが変わりました!

岩田:まさにそこを目指しました。絵だけでなく、説明の部分も書いてもらったんです。何と何と何の説明をお願いしますって言って。

リアルな姿が伝わる必要があったので、文章も全て、実際に医療的ケア児を育てている人に書いて欲しかったんです。

木島:やりとりが大変でした…笑

岩田:特にこだわったのは、「医療的ケア児の1日の過ごし方」の部分です。

こちらが実際のパンフレットの、「医療的ケア児の1日」の部分です!

岩田:こういうのが欲しかったんです。こういった実際の1日の生活を描いているものが、今までなかったので。

医療的ケア児の1日ってなかなか知らないじゃないですか。

病院だとケアは交代で行いますが、家に帰ってきたらほとんどは母親が1人でケアを行います。だから本当につきっきりになるんです。

ご飯作って、ケアして、ご飯作って…っていう大変さが、知らないとわからないんですよ。

主たる介護者である親への負担が本当に大きいことを伝えたい。ケースワーカーも、実際にこういう生活をしているという現実を知らないので、どういうサービスを紹介したらいいかというのがわからない。

医療的ケアについてよくわかっていないと、支援者側もサービスのつなげようがないんです。

だから、なるべくわかりやすく、リアルな実際の姿を描いてもらったんです。

木島:このパンフレット、横浜市以外の友人たちが本当に分かり易いよねってブログに載せてくれたり、Facebookで拡散してくれたりしました。

医療的ケアとか関係ない学校の友達に見せてあげたいって言われたり、これからナースを目指す学生さんに見せてあげたいからって言われたり。

岩田:すごく嬉しい…!コロナの影響で、せっかく学校などに配布しても、学校が閉まっていたので。これからたくさんの方に見て頂きたいです。

縦割り行政を超える、4局にまたがる画期的な取り組み

こども青少年局の岩田さん(左)と浅野さん(右)

 

ーーー横浜市は医療的ケア児支援に、かなり前向きに取り組まれているのですね!

浅野:はい。横浜市の医療的ケア児支援には、横浜市の「こども青少年局」「健康福祉局」「医療局」「教育委員会事務局」の4局で取り組んでいますが、これはすごく画期的なことなんです。

行政では、局が違うと、それぞれやっている事業についてお互いに知らないことがほとんどです。

なので似たようなサービスであっても、各局が協力することってあまりないんです。利用する側からすると同じ横浜市のサービスなんですが、中の事業は別になっていたりします。

 

ーーーいわゆる「縦割り」と言われるものですね。横浜市がその壁を超えることができたのはなぜなのでしょうか?

浅野:今回の事業はこども青少年局が中心になっていますが、医療的ケア児はだんだん大人になりますよね。18歳になったからいきなりケアがなくなる、ということはありません。

なので、切れ目なくそのまま次の支援につながっていくことになります。

こども青少年局から、大人になると健康福祉局につながり、医療的ケア児は医療を必要とするので医療局に関わり、子どもたちは学校に行くので教育委員会事務局に関わります。

そうして、元々はこども局だけでやっていたことが、だんだんと広がって行きました。

岩田:こうやって4局が連携してやっていることは、とても珍しいと思います。横浜市としてもなかなかないことです!

国も医療的ケア児支援に力を入れ出して、それに伴って自治体がやらないといけないことも増えてきて、それでこの4局の連携が実現したという面もあるでしょう。

横浜市はなぜ医療的ケア児への支援に早くから取り組めたのか?

 

ーーー医療的ケア児というのは、先ほどもおっしゃったようにまだまだ認知が進んでいません。ですが横浜市が、言うなればマイノリティな存在である医療的ケア児の支援に、局を超えて取り組む体制ができたのはなぜでしょうか?

岩田:小児医療や在宅医療に関わる先生方の、医療的ケア児に対する課題意識が高かったんです。現場の声が大きかったということですね。

もともと重症心身障害児などの障害ある方は、福祉施設で十分みて下さるんです。

ですが、医療的ケア児は、医療的ケアがあるというだけで、福祉施設には受け入れてもらえない。

そういった課題が、在宅医療の先生や子ども医療の先生方から出ていたんです。こういうお子さんたち(医療的ケア児)がいて、それでどうにかしなければと。

そういったお話が先生方から上がり、横浜市としても課題を認識するようになりました。

 

ーーー現場の医師から声が上がっていたんですね!

浅野:そうですね。小児在宅について検討する委員会があるんですが、そこで、在宅の先生や子ども医療の先生が、こうしたらいいんじゃないかなど意見を下さったりしています。

それから、横浜市にはもともと「メディカルショートステイ」という、重症心身障害児者のためのレスパイトの仕組みがあります。

その事業に関わる会議も定期的に行っていて、その中でも医療的ケア児に関する課題が出ていました。

それで横浜市は、医師会とも協力して医療的ケア児支援に取り組むことになったのです。

現在は、6人いる医療的ケア児コーディネーターを中心に支援事業を進めています。

まとめ

インタビューを進めると、横浜市がこの医療的ケアの啓発パンフレットに込めた、様々な想いが見えてきました。

かわいいパンフレットにしていろんな人に「手にとって」欲しい。そして医療的ケアについて知って欲しい。学校やその他の施設も、医療的ケアを怖がらずに受け入れて欲しい。

といった想いです。

医療的ケア児は、医療的ケアがあるがゆえに、就園や就学がスムーズにいかないという課題があります。

横浜市がそれらの課題に、どう向き合っていこうとしているのか。インタビュー後半では、その辺りについてのお話を伺っています。

インタビュー後編はこちら↓

「医療的ケア児コーデイネーター」を中心に地域での支援を!【横浜市インタビュー後編】

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【パンフレットのお問い合わせ先】

横浜市こども青少年局こども福祉保健部障害児福祉保健課
電話:045-671-4279
ファクス:045-663-2304
メールアドレス:kd-syogaijifukuho@city.yokohama.jp

横浜市のお問い合わせ先HP

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