読み方【けいび いかん えいよう】
目次
「経鼻胃管栄養」とは
経鼻胃管栄養とは経管栄養の一種で、鼻の穴から胃までチューブ(NGチューブと言います)を入れて、栄養剤や水分・お薬を注入する方法です。
「経管栄養と言えば経鼻胃管栄養!」というくらい、一般的な医療的ケアです。
経管栄養について詳しくはこちらの記事をお読み下さい。
経鼻胃管栄養のメリット・デメリット
メリット
- 手術の必要がありません。また、チューブを入れるのが簡単です。
- 自宅でチューブの交換が可能です。(鼻の形によっては入れるのが難しい場合もありますが…)
- 栄養剤やお薬の注入以外にも、胃の中を洗ったり、胃の中の食べ物のカスや空気を吸引して、胃の中の圧を下げることもできます。
デメリット
- チューブが抜けやすいことです。注入中にチューブが抜けて栄養剤等が気管・肺に入った場合、誤嚥性肺炎になる可能性があります。
- 1~2週間ごとにチューブを交換する必要があります。
- チューブが細く、胃ろうに比べて詰まりやすいです。
経鼻胃管栄養のチューブ(NGチューブ)が入っている時の注意点
NGチューブが抜けないようにしましょう。
【理由】
- 注入中に抜けると、注入している栄養剤等が気管や肺に入るからです。(これを誤嚥といいます)
- チューブの再挿入が難しい場合があるからです。
【予防策】
- 鼻から出ているNGチューブは頬にテープで固定後、先端を耳に掛けたり衣類に留めておきます。
- 自分でNGチューブを抜く可能性のある場合は、手にミトン(手袋)を着けたり、NGチューブの隙間が出来ないように、小鼻の脇ぎりぎりにテープを貼っておきます。
NGチューブの先端が胃の中にあることを確認しましょう。
【理由】
NGチューブの先端が気管だと、栄養剤が気管や肺に入り誤嚥性肺炎になる可能性があるからです。
【NGチューブの先端が胃の中に入っているかの確認方法】
- NGチューブに注射器をつないで引き、胃の内容物が引けてくればOK!!
- 何も引けない場合は、聴診器をみぞおちの上に置き、あらかじめ空気を入れておいた10〜20mlの
注射器をNGチューブに接続する。次に、5〜10mlの空気をシュ一ッと速く入れ、『グー』とか『ボコボコ』という音が聞こえればOK!!
経鼻胃管栄養のトラブル時の対応
NGチューブの先端がどこにあるか確認出来ない場合
【考えられることと対処法】
- NGチューブが浅く入っているため、先端が胃の内に達していないことがあります。➡️子どもの身体が大きくなっているのに、入れる長さを変更していないことが時々あるため、入れる長さを測り直しましょう。
- 胃の手前でチューブがUターンしており先端が食道内に戻っている、または深く入り過ぎて胃内をUターンして食道内に戻っていることがあります。➡️チューブを入れ直しましょう。
- 食道裂孔ヘルニアのため、胃の上部が横隔膜より上(胸腔)へ出た状態になり、チューブの先端が胸腔内にある場合。➡️食道裂孔ヘルニアの場合は、医師や看護師から聴診器を当てる場所(胃の位置)がご家族に伝えられます。本来の胃の位置よりも上のほうに聴診器を当てて、もう一度音の確認をしてみましょう。
- 胃の中が空気でいっぱいになってしまっているために、注射器で注入した空気の音が聞こえないことがあります。➡️この場合、みぞおち辺りが膨らんでいる(張っている)感じがするので、先に胃の内容物を注射器で引いてみると良いでしょう。
- 注入した空気の音が不明瞭な場合。➡この場合は、NGチューブの先端が胃ではないと判断し、チューブを入れ替えましょう。
空気の音が一度で確認できない時は繰り返し確認します。
確認の為に空気が多めに入っても問題はありません。確認が不完全のまま注入することは絶対に避けましょう!
おそらく大丈夫だと思うが不安が残る場合は、栄養剤やお薬を注入する前に湯冷ましを10ml注入し、少しの間状態を観察しましょう。
変化がないのを確認してから、栄養剤やお薬の注入を行いましょう。
胃管チューブの入れ方
必要物品
胃管チューブ、固定用テープ、マジック、注射器(シリンジ)、潤滑剤、聴診器
胃管チューブを入れる方法とポイント
- 手指の消毒をします。
- 胃管チューブを入れる長さを決め、マジックで印をつけます。➡️「鼻から耳までの長さ」と「耳からみぞおちまでの長さ」を足したものが入れる長さになります。
- 胃管チューブの先端に潤滑剤をつけます。
- 胃管チューブを入れます。
胃管チューブを入れるコツ
【チューブを入れる姿勢】
子どもを仰向けに寝かせ、リラックスできるように少し身体を起こします。(子どもが動いてしまう場合はバスタオルで身体を包み、入れる人の両膝で子どもの身体を挟みます)
片手で頭を固定し(介助者がいれば固定をしてもらう)、もう片方の手で鼻の穴から胃管チューブを入れます。
【チューブを入れる時のポイント】
子どものあごを少し上げて、水平に入れるのがポイントです。
顔を元に戻し胃管チューブを進め、鼻の奥まで入ったら一旦止めて、唾をゴクンと飲むタイミングに合わせてチューブを入れていきます。
むせ込んだり、顔色が悪くなったりする場合は、すぐに抜いて、落ち着いてから入れ直しましょう。口の中で胃管チューブがとぐろを巻いていないか確認しましょう。
【チューブが入ったら…】
入れる長さの所まで入ったら軽く固定し、胃管チューブの先端が胃の中に入っているか確認します。
動画でご紹介している鼻チューブ交換の方法はとても参考になります!
まとめ
今回は経鼻胃管栄養について、特徴や注意点を挙げ\\てみました。
「経管栄養と言えば経鼻胃管栄養」というくらい、一般的な医療的ケアです。
初めて胃管チューブを入れる時、恐る恐るチューブを進めていた指先が、しばらく経つとスルスルっとあっという間に入れているママさんをたくさん見てきました。
ママだけでなくお子さんも初心者です。必ず出来るようになりますよ!
【参考文献】
【ライター&監修】
ゆっこ
【経歴】
看護師歴17年目。大学病院では、救命救急センター、外来、病棟、透析センター、内視鏡センターで勤務。その他に看護専門学校教員、訪問看護など様々な現場を経験。得意分野は救急看護。
2020年からはフリーランスとして、看護師ライター、看護師シッター、オーダーメイド看護、イベント救護室、健康相談員として幅広く活動している。
プライベートでは、9歳、5歳の子どもを育てる2児の母。
5歳の子どもは先天性声帯狭窄症で気管切開をしている医療的ケア児。都内の認可保育園に看護師配置のもと通園している。就学前の抜管に向けて治療中。
自身の経験をブログで発信中。