【前編】小児プライマリケア認定看護師インタビュー|小児看護の課題解決を目指して

「小児プライマリケア認定看護師」をご存知でしょうか?

2020年度から教育課程がスタートした新たな認定看護師資格で、特定行為研修を組み込み「小児救急看護認定看護師」から「小児プライマリケア認定看護師」へ名称変更されました。

2021年度が第1期で、済生会横浜市東部病院で教育課程が開催されました。日本全国から応募した9名の看護師が受講され、本インタビューではそのうち6名の方々にお話を伺っています。

受講された皆さんの熱い思いを、前後編に渡ってお届けします!

前編では、「小児プライマリケア認定看護師にできること」についてお聞きしました。

お話してくださった受講生の看護師の皆様

五十嵐 隼人(いがらし はやと)様  昭和大学江東豊洲病院
宇都山 奈保(うつやま なほ)様  恩賜財団 済生会横浜市東部病院
酒井 美緒(さかい みお)様  独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院
望月 健之(もちづき たけゆき)様  平塚市民病院
二階堂 伸也(にかいどう しんや)様  藤沢市民病院
森谷 幸絵(もりや ゆきえ)様

【認定看護師とは?】

認定看護師とは、高度化し専門分化が進む医療の現場において、水準の高い看護を実践できると認められた看護師のこと。認定は、日本看護協会が行っています。

看護師として5年以上の実践経験を持ち、日本看護協会が定める600時間以上の認定看護師教育を修め、認定看護師認定審査に合格することで取得できる資格です。

(日本看護協会HPより)

「かかりつけの看護師」?小児プライマリケア認定看護師が目指すもの

ーーー初めに、「小児プライマリケア認定看護師」とは、どんな資格で何ができるのかを教えて下さい。

五十嵐さん

時代の背景とともに、小児救急認定看護師資格が、プライマリ・ケアすなわち「地域全体の子どもたちを守ろう」という資格に変わりました。

気管切開のカニューレ交換や、特定の条件があれば医師の指示を待たずに輸液ができるなどの「特定行為」が可能になる研修が資格の教育課程に組み込まれています

医師の減少や医療資源に差が生まれる中で、こうした医療行為の担い手を増やすことにより、子どもたちを守っていこうという意図があるのだと思います。

私たちは1期生で、本試験は今年の10月。資格が取れるのはそれ以降です。

なので、小児プライマリケア認定看護師の強みというものは、今後私たちが見つけて行くべき課題でもあると考えています。

ーーーなるほど。では、現時点(2022年2月)では、厳密にはまだ小児プライマリケア認定看護師は誕生していないのですね!それでは、「教育課程を終えた皆さん自身が考える、小児プライマリケア認定看護師」とは一体どんなものでしょうか。

宇都山さん

まだ活動していないのではっきりとは言えない部分があるのですが、「子どもと家族のことを考えられる看護師」であるというのは間違いないかなと思っています。

この過程を目指す時、パンフレットに「かかりつけの看護師になりませんか」と書いてあったんです。

かかりつけの看護師というのは、子どもと家族にとってだけではなく、地域にとっても重要な役割があると思っています。

例えば地域の中である困りごとがあり、どこに相談したらいいんだろうとなった時、「あの病院だったらあの看護師がいるから相談してみよう」と言われるような存在を目指していきたいです。

ーーー確かに医療的ケア児が学校に行くときなど、受け入れる学校側もどこに相談していいかわからず、話が進まないなんてケースがあると聞きます。そういう時に相談窓口があるとみんなが心強いですね!

望月さん

認定看護師って、褥瘡(じょくそう)のケアについての認定看護師だったり、集中ケアの看護師だったりと、ほとんどが細かい区分に分かれているんですよ。

ですが、この小児プライマリケア認定看護師は、小児全般をみていくという資格になっています。

なので、救急で来た子の支援から退院した子の支援まで、子どものためにいろんなことができる看護師かなと思っています。

ーーー認定看護師の中でも、新しい視点を持った新しい資格なんですね!

小児看護で感じた課題の解決を目指して

森谷さん

そもそも看護学校において、小児看護に特化した授業は少ないんです。さらに少子高齢化の影響で、老年看護の実習の割合が大きくなっており、小児看護の割合は少なくなっています。

私も小児看護を12年やってきましたが、小児の病棟で働き始める時に、そこで一から小児看護や医療的ケアのことを学び始めるケースを何度も見てきました。

なので看護師それぞれで支援のやり方に差が出てしまったり、私自身も退院時の地域連携で、地域の実情をそんなに知らないまま支援していることがありました。

看護師と言っても、最初からスーパーマンではありません。経験の中で培っていく知識がすごく多いんです。

なのでこの資格ができると知った時に、小児看護や医療的ケアについてしっかり学び直したいと思い受講しました。

今後は、学んだことをもとにみんなで知識を共有し、支援に活かしていきたいと思っています。

ーーー当たり前ですが、医療職の方も人間であり、最初から知識が完璧な人はいませんよね。でも、私たち患者は、どうしてもそれを忘れがちになってしまいます。

 

酒井さん

私は総合病院の混合病棟で働いていますが、専門性がない人が小児をみる場合、どうしても子どもたちの安全性が脅かされる危険があります。

そういった状況を打開するために、自分に根拠や知識が必要だなと思っており、この教育過程を受けることを決めました。

私は今、小児循環器科にいます。循環器科の子どもたちは退院しておうちに帰った後、就学時に障壁があることが多く、そのあたりも支援できたらいいなと思ってを受講しました。

二階堂さん

私は成人と集中治療をずっとやってきて、3年前に小児科病棟に移りました。そこで医療的ケア児にも初めて接しました。

難しさを感じたのは、新しい分野に入ってある程度自分が詳しくしっかりした存在にならないと、お子さんやご家族と関わっていく中で先生(医師)頼りになってしまうと思ったことです。

チーム医療の中で、医師の存在に頼る部分が大きくなるのではなく、私自身も看護師としての役割をしっかりと発揮できれば、それがチーム全体の質の向上、支援の向上にもつながるのではないかと思いました。

そのためにもっと詳しくなりたい、看護師としての能力を上げたいと思って受講を決めました。

第1期生のみなさんそれぞれの思いがある

今回のインタビューでは、受講生のみなさんがそれぞれ小児看護で課題を感じた部分があり、それを変えたいと思って受講されていることがわかりました。

小児プライマリケア認定看護師はまだ新しい資格であり、これから1期生のみなさんの活動が資格の可能性を広げていってくれるのでしょう。

後編では、「教育過程で印象に残った部分」「小児医療の問題点」そして、「今後小児プライマリケア認定看護師としてどう活動していきたいか」についてお聞きしています!

後編を読む

こちらの記事は、クラウドファンディング「医療的ケア児の就学事例集をつくりたい!」を、教育課程を受講された看護師有志の方々にご支援頂き作成が実現しました。

ご支援本当にありがとうございました。

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