毎日を快適に過ごすために、お薬を飲んでいる方は多いと思います。
また医療的ケアや病気があり、お薬は命を守るために絶対に必要なもの…そういった方もいるでしょう。
それらのお薬は、いつも当たり前のように私たちの元に届きます。
ですが、お薬が安全かつ安定して供給されるために、実に多くの会社と人が関わっているのをご存知でしょうか。
今日は、その中でも流通の重要な部分を担う「医薬品卸(おろし)業」であるアルフレッサ株式会社、さらにその子会社の、スペシャリティ医薬品を扱うエス・エム・ディ株式会社にご協力いただき、お薬の物流拠点を見学させていただきました!
エス・エム・ディ株式会社の三尾さなみさんは、私たちの「アンリーシュ作文コンテスト2020」に協賛いただき、さらに審査員を努めてくださいます。
そのご縁で、今回の見学が実現しました!
厳格な品質管理、高度にシステム化された流通の仕組み、さらに災害時の取り組みまで、たくさんのお話を聞くことができました。
目次
医薬品卸(おろし)とは?
通常お薬は、製薬会社からいったん医薬品卸会社に集まり、そののち医療機関に届きます。
ですが、医薬品卸はただお薬を仕入れて配送するだけが仕事ではありません。
お薬の中には、厳格な管理が必要なものや、そのお薬があることによって生活できている方へ「確実に届けなければいけない」ものもあります。
それらを厳しく管理し、さらに医療機関からの緊急の要請に対応したり、情報を収集したりする、そういった役目を担うのが「医薬品卸」なのです。
アルフレッサ株式会社について
アルフレッサ株式会社とは、全国に132もの拠点を持ち、グループ会社を入れると47都道府県全てを網羅する、業界トップクラスの医薬品卸会社です。
医薬品だけではなく、レントゲンやMRIなどの医療機器、さらには経管栄養のチューブやマスクに至るまで、医療現場で必要となるあらゆる「モノ」を取り扱っています。
エス・エム・ディ株式会社について
エス・エム・ディ株式会社はアルフレッサ株式会社の子会社で、スペシャリティ医薬品の流通に特化した会社です。
スペシャリティ医薬品とは、厳重な温度管理や品質管理が必要なお薬のこと。
投与する直前まで一定の温度下に置かなければいけないなどの制限があるため、しっかりした設備を持つ医薬品卸が流通を担当します。
また、希少難病を持つ患者さんにいち早くお薬を届けるため、治療のサポートなども行っているのがエス・エム・ディ株式会社です。
アルフレッサ埼玉物流センターの倉庫見学
今回見学させていただいたアルフレッサ株式会社の埼玉物流センターは、7,500坪もの広大な敷地に建つ、巨大な流通拠点です!
27,000アイテムを扱い145億円分の在庫を持つという、同社における関東最大の流通拠点。
ここでは、前日夜に受けたお薬の注文を夜の間に仕分け、翌日にはもう医療機関に届けます。
1日に20億円もの医薬品が動く巨大倉庫
また、当日は、実際に埼玉物流センターの中に入れていただき、どうやってお薬を管理しているかを見ることができました!
残念ながら庫内の撮影はできませんでしたが、正直、ずっと圧倒されっぱなしでした。
広い倉庫の中を縦横無尽にルートが走り、ビル3階建の高さがある巨大な保管棚をロボットが動き回る様は、まるで映画のワンシーンのようで、ただただ「すごい」という感想しか出ません。
また、膨大な量の注文をミスなく仕分けし、翌朝には箱詰めしてトラックに乗せることができるそのシステムが本当にすごいと思いました。(なんと1日に20億円分もの医薬品が動くそうです!)
まるで巨大な冷蔵庫!?スペシャリティ製品の保管庫
低温管理が必要なお薬は、当たり前ですが低い温度に設定された特別なエリアで作業されています。
作業エリアの温度はなんと5度!冷蔵庫の温度とほぼ変わりません。
もちろん作業されている方は皆さん、帽子やダウンジャケットで厳重装備。
私は数分そこにいただけで寒くなり、外に出してもらいました!
ここからさらにお薬は専用のコンテナに積まれ、患者さんの元へと配送されていきます。
アルフレッサの災害時の取り組みについて
実際に倉庫を見せていただいた後は、災害時の取り組みについてお話を伺うことができました。
主にお話してくれたのは、埼玉物流センター長の佐野正明さんと、ロジスティクス業務部長の牧野健二さんです。
日本は災害の多い国です。
最近では2019年の台風19号が記憶に新しく、さらに東海地震や首都直下型地震もいずれ必ず来ると言われています。
そういった災害が起こったときに、絶対に必要なもののひとつがお薬です。
継続してお薬を飲まれている方は、災害時のお薬の流通について不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
各拠点が互いに補完し合う仕組みづくり
アルフレッサ株式会社は、全国に8箇所の大きな物流拠点があります。
このうち、どこかの拠点が被災した場合は、自動的に近隣の別の拠点から配送する仕組みになっているそうです。
さらにシステムの要であるデータセンターも、西日本にメインを置き、東日本にサブを置くという補完体制。
災害に備えた仕組みを整えています。
3.11が起きたとき、総力を上げてお薬を届けた
未曾有の大災害だった3.11の東日本大震災。東北から関東まで広く被災し、当時アルフレッサの流通網も大ダメージを受けたそうです。
実際にその時の対応についても聞かせてくれました。
当時は東北の物流センターが甚大な被害を受けたため、埼玉物流センターからも東北にお薬を送っていたそう。
「あのときは、持っていて、届けられる卸業者が、医薬品を届けていた」
と語ってくれた佐野さん。
どこの医療機関がどこの業者と取引があるから、などという建前は捨て、とにかくその薬を必要としている患者さんのもとへ、医療や物流業界が協力して届けたという話です。
「患者さんを救う」という目的がいちばんであることを見失わず、大変な状況の中で業務を遂行された医療関係の方や卸業者の方々…聞いていて本当に胸が熱くなりました。
ヘリポートを有した拠点を建設し、災害に備える
さらに、その時の教訓から、アルフレッサは神奈川と愛知の2箇所の物流センターにヘリポートを建設。
緊急時には、ヘリコプターを利用してお薬を被災地に届ける仕組みができています。
実際に2回ほど訓練もされたそうで、危機感を持って災害時対応の準備をされている様は本当にすごいと思いました。
患者さんとの関わりを大切にする会社へ
最後に、「医薬品卸」という特殊な業務を通じて、お薬を届ける先である私たち(患者さん)についての想いを聞かせていただきました。
佐野:新しいお薬ができた時に、こんなことができるんだ、こんな患者さんを救えるんだと思うと嬉しくなります。
スペシャリティの薬は管理が厳しく、製薬会社から受け取って患者さんのもとへ届けるまでの一元管理が必要です。
そこに携わることができるのはとても嬉しいですね。
牧野:昔は、庫内の作業は今よりずっとアナログでした。
どんなお薬がどの会社から出ていて、どんな場所にそれを配送するのか、作業していてもそれらが実感できていました。
ですが今は機械化されていて、そういった部分は逆に見えづらくなっています。
なので、実際に在宅医療の医師に協力してもらってお薬が患者さんのもとへ届くのを見たり、医療機関のカンファレンスに出席するなどして、「自分たちの仕事と患者さんへの関わり」を大切にしています。
見学を終えて
今回は、お薬管理の高度なシステムや災害時への取り組みなど、ご縁がなければ普段知ることのない流通の裏側を知ることができました。
普段私たちが何気なく手にしているお薬。
それらは、多くの人々が真摯に関わってくれるおかげで、安心・安全・スピーディに私たちのもとに届いているのです。
こうして「知る」ことは本当に大事で、お互いに理解が深まれば感謝が生まれ、緊急時には助け合うことができます。
それはまさしくアンリーシュの活動理念。
私自身も、多くのことを教えられたアルフレッサ埼玉物流センターの見学でした。
アルフレッサ株式会社の佐野さん、牧野さん。エス・エム・ディ株式会社の三尾さん、生駒さん。
どうもありがとうございました!