今回は、2020年に開催したクラウドファンディングにご支援くださった訪問看護ステーションれぽの代表でいらっしゃる池田千亜季様に、事業を立ち上げるまでに至った経緯や想いをお聞かせいただきました。
目次
病院勤務から訪問看護へうつったきっかけ
―――病院から訪問看護に移るときに、池田さん自身は「不安」や「病院と勝手が違ってなんか困るんじゃないかな?」みたいなものはありませんでしたか?
そうですね…訪問看護に移るその時期は、新卒で入った病院に8年~9年ぐらい務めた時期でした。元々病院で夜勤をしたり、というのが私は苦手でした。(苦笑)
また、私は看護師として働くうえで、一人一人の患者様との時間を大切にしたいと思っていましたし、退院された後のことも気になっていました。
しかし勤めていた病院は、(外科に所属していたのですが、)すごく忙しくて、どこか流れ作業的な感じもしていました。
そんな時期に、その病棟で訪問看護の体験(病棟内体験留学のような)制度があり、訪問看護の部門に行かせていただきました。
実際に体験してみると、すごく魅力を感じました。
お家に行って患者様と1対1で過ごせる時間があるのが、私には合っていると思ったし、思い切って在宅の方に行ってみたいなぁという気持ちがドンドン芽生えてきました。
その後、病院を退職し半年ほど療養型病院のようなところに在籍してから、訪問看護の世界に入りました。看護師になってちょうど10年目くらいだと思います。
その時は、不安というより「自分がしたい仕事ができる!」という気持ちの高まりの方が強かったです。
これまで10年看護師をしてきたのもあり、「何とかなる、やってみよう!」という期待と楽しみで訪問看護に足を踏み入れた覚えがあります。
訪問看護に就職。1から訪問看護を学ぶ
―――ご経歴を拝見していますと、病院を退職されて、れぽを立ち上げるまで7年くらいは別のステーションでお勤めされたということでしょうか?
最初の病院を退職してから大きな訪問看護ステーションに勤めたのですが、そこで1から訪問看護を教えていただきました。
これまで私は、小児の看護・病棟経験が無かったのですが、訪問看護に入ってから小児に関わることになりました。
最初はすごくドキドキだったんですけども、本当に大人から子どもさんの訪問まで全部そこで教えてもらった、という形になります。ここでの7年間はとても貴重な経験でした。
訪問看護ステーションを立ち上げ、仲間が集まる
―――ご自身で訪問看護ステーションれぽを立ち上げられたのはいつごろでしょうか?
令和元年の8月1日です。
―――れぽさんでは今、お子さんとご老人の比率っていうのは大体どれくらいでしょうか?
8割9割くらいが大人の方で、子どもさんがまだ本当に数名しかいないんです。今後、医療的ケア児含めお子さんもみていきたいなぁという思いは強いです。
―――今訪問されている地域は、やっぱり和泉市中心ですか?
そうですね、今和泉市、その周辺ですねぇ。高石市、泉大津市、岸和田市、忠岡町、というような、和泉市に隣接している市町村が多いですね。
―――さきほども「1対1で患者様と向き合う」というお話があったように、一人ひとりと向き合うとか、在宅の不安に対してできることをするという方が、れぽで働く方には多いのかなと感じました。
れぽを立ち上げるとき一番最初に誘ったスタッフも、立ち上げ前に訪問看護ステーションで一緒に働いてたスタッフなんです。
彼女も訪問看護がしたくて、でも子育てと両立しなければならず、自分の条件に合うところに巡り会うまで転々とし、やっと訪問看護にたどり着いた…という経歴があります。
なので、彼女なら一緒に同じ思いでやってくれるかな、というのがあり、思い切って誘ってみました。
その後彼女伝いにまた看護師さんが集まってきてくれたりして、今れぽには在宅に対する思いが熱いスタッフが揃っていて、すごくうれしい状態ですね。
―――今ホームページでも、採用募集をされていますが、れぽさんが大切にされている職場環境や考え方はありますか?
看護師さんで、一度現場から離れている方や、今の職場で条件が合わない方、子育て中のお母さんなど、なかなか「仕事と家庭を両立」できている方って少ないんじゃないかな、と思っているんです。30代・40代で、育児も大変・・・というママの看護師さんも多い。
私達れぽは、子育て世代でも「仕事と家庭を両立」できて、柔軟な働き方ができるような職場でありたいとずっと思ってます。
なので、今働いていただいている、常勤の看護師さん、非常勤の看護師さんも、皆さんまだまだ子育て世代なのです。
例えば、この春3月4月はお子さんの卒業式、入学式でバタバタしているお母さんであれば、仕事の合間に「ちょっとだけマラソン大会で走ってるの見てくる」などと言って見てきてもらったりしています。
そんな感じで、仕事も直行直帰することで、保育所のお迎えに間に合うよう配慮したり・・・。臨機応変に採用も働き方も考えたいなぁと思っています。
また、今後は子どもさんの訪問看護もどんどん増やしていきたいという想いがあるので、子育て世代のお母さんがたくさんいたほうが、訪問先のお母さんにも共感していただける部分があるんじゃないかなと思っています。
なのでれぽでは、積極的に子育て世代のお母さんにも訪問看護の世界に足を踏み入れてほしいという強い想いがあります。
―――素晴らしいですね。「マラソン大会ちょっと見てくる」とか結構プライベートなこともストレートに相談できる雰囲気のある会社なんですね。
そうですね。コロナの自粛期間で学校に行けなかった時期は、スタッフの皆さんが子どもさんを事務所に連れてきててて、プレイマットやおもちゃを広げて遊ぶといった感じで、事務所が託児所代わりになったりしました。(笑)
利用者様に対して心がけていること、れぽが大切にしていること
―――利用者さんに対して心がけていることや、れぽさん独自で強く大事にしてることがあれば教えてください。
やっぱり大きいステーションさんにはできない、小さいステーションならではのフットワークの軽さを大切にしています。ちょっとことくらいは大丈夫だから、ここまでは私たちやるよーってところですね。「利用者様にとって助かることはなるべくやる!」です。
具体的に言うと、ここはヘルパーさんの仕事なので訪問看護ではできませんっていうようなお仕事とかも、もうまとめて時間もあるしやっちゃうね、みたいな。(笑)
ケアマネさんとかにお聞きすると、『そこは臨機応変にやってもらえるのがすごく助かる~』と言ってもらえますし、利用者さんにも安心してもらえます。
ここはもうヘルパーさんじゃないとできないから置いとくね、と言われると、利用者さんも『あぁ~困ったなぁ』となるとお聞きするので、そういうことがないように気を付けています。
スタッフの皆は、わたしに『(利用者さんが)こう言ってるんですけど、ここってやっていいですか?』って聞いてくるんですけど、『うん。うん。いいよ、もうやってやって』って言って(笑)
ちょっとした小さいことでも「相談していただけたら何とかします」っていうような部分が伝わればいいなぁと思いながら、地域の方々と関わっています。
コロナによる影響は?
―――コロナ禍で変化したことはありますか?
コロナの第二波と言われる時期に、近くに感染されている方やクラスターが発生したという情報がきましたね。
それまでも対策はそれぞれの施設さんも、私達もしっかりしていたのですが、急激にグッと自分の身近に迫ってきたと感じました。
それから、利用されているサービスなど、いろいろな部分に支障が出てきたなと実感しています。
「リハビリやデイサービスに行けないから訪問リハビリを使いたい」という問い合わせや相談も増えてきました。これはコロナによる独特の訪問看護の使い方かなぁと思いましたね。
もう一つは、スタッフがコロナ感染されたっていう他の訪問看護ステーションさんが近くにありまして、そこから「2週間だけ自分の患者様のところに訪問に行ってもらえないか」っていう問い合わせがあったりとか。
れぽのように小さなステーションであればあるほど、こういった時の対応が難しいな、と感じています。
また、訪問時にガウンやフェイスシールドをしていくと、逆に怖がられるような年配の方もいらっしゃっいます。
『そんなんされたら嫌だ』と不安になられる方もいれば、『きっちりコロナ対策はしてきて』と言われる方もいらっしゃいますし、細かい対応が求められる・・・そこが難しいところですね、本当に。
HPやインスタグラムで情報発信
―――HPを拝見しましたが、すごくわかりやすくてきれいなHPですね。またインスタグラムでの情報発信にも力を入れていらっしゃいます。
ありがとうございます。
「ホームページを見ました」と言って面接に来てくれた看護師さんもいらして、年齢層が若い方も見てくださっているのかなと思います。
―――ブランドカラーでもある『オレンジ』には何かこだわりがあるのでしょうか?
訪問時に子どもさんが好きな色、目に入って怖くない色…などいろいろ調べて、ピンクやオレンジなどの暖色系の色がいいよね、という想いがありました。
それで、近隣のステーションさんの中にはなくて、かつ目につく色がいいなと考え、オレンジがこの辺りではあまり見ない色だったので、ビタミンカラーでいいなと思い、オレンジに決めました。
今後の夢
―――今後やってみたいこととか、今思ってらっしゃる夢みたいなのはおありですか?
医療的ケア児を育てていらっしゃるお母さん達が休憩できる時間が、絶対的に足りないと感じています。
お母さんたちと話していて、「自分の時間が取れない」ということを一番お聞きします。
傍で見ていても、生活の基盤となる、寝る・食べるやお風呂に入るなど、基本的な部分を削らないといけないという状況である…これは今に始まった問題ではないし、これからもずっと続いていくかもしれないだろう課題ではあるんですけど。
睡眠を毎日2~3時間しか取れてないとか、昼間はお子さんがずっとお家にいて仮眠をとる時間もないとか、ずーっと吸引してますとかが現状で…。
対策を考えても、中々うまくいかない場合もあって、そこがお母さんの一番辛いところなのかなと思います。お父さんはお仕事に行かれるご家庭が多いですから、どうしてもお母さんにケアの負担が重くのしかかってるのを感じますね。
お母さんの休息の時間が増えれば、子どもさんに対して「しんどいなぁ」という想いから、ちょっと離れてみて気持ちの切り替えをして、「本当にこの子がかわいいから頑張ろう」と思える…そんなサポートができないかなと思います。
なので将来は「医療的ケア児たちが通えるディサービス」のような場所を作りたいと思っています。いつになるかわからないけども、そこまで行きたいという想いは最初からあります。
読者の皆様へメッセージ
―――アンリーシュの読者にメッセージをお願いします。
私たちみたいな小さなステーションでも、ちょっとでもお役に立てるような働きをしたいと思ってるステーションがいるんだよーってことを知ってもらいたいなと思います。
また、こういう私たちの気持ちに共感してもらえる方と一緒にお仕事できたり、お近づきになって色んなお話しができるような形になっていけばいいな、と思っています。
地道ですけど、私たちが今ここでできるお仕事をコツコツと続けること、そして情報発信できるようにしていきたいなと思います。
訪問看護ステーションレポ 会社概要
名称 蒼空株式会社
所在地 〒594-0073大阪府和泉市和気町2丁目2番82号
TEL 0725-44-6600 (訪問看護ステーションれぽ)
FAX 0725-44-6668
E-mail info@aozora-lepo.com
管理者 池田 千亜季
訪問看護師 6名(令和2年4月現在)
営業時間 9:00~18:00 (月~土)
定休日 日・祝日・年末年始
HP:https://aozora-lepo.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/lepo.station/?hl=ja
編集後記
近年、少しずつではありますが医療的ケア児の認知は上がってきました。また訪問看護ステーションの事業所数も増加しています。
それでもまだ家族(特にママ)は、睡眠や食事や入浴などが満足にとれない人たちもいます。池田さんはじめ、れぽの皆様はこの現状がちょっとでもよくなるよう、日々頑張ってらっしゃいます。
池田さんのお話を聞くと、お仕事や利用者さんに向き合っていらっしゃる真摯な姿勢がひしひしと伝わります。また、明るい笑顔とお人柄は、お話してて自分も元気になるしとても温かい気持ちになりました。
大きな病院の現場も、小さなステーションの現場も両方知っている池田さんならではの挑戦は、とても共感できるものですし、これからも応援していきたいと思います。