医療的ケアとは

(読み方)いりょうてきけあ

医療的ケアとは、法律上定義されている概念ではないが、一般的に「日常生活を送る上で必要とされる衛生管理に関する医行為(医療行為)」である。

医療的ケアとは

障害や疾患等により低下した身体機能を、医療機器等を用いて補助している状態を指す。

医療的ケアが必要となる原因は、先天的・後天的な疾病によるものや、事故(出産事故、交通事故、溺水事故、誤嚥窒息事故等)等がある。

医療的ケアは医療行為の一部とされているが、医師が行う専門的な治療行為とは異なり、日常的な介助行為であるため、医師や看護師以外の資格を持たない保護者や本人が行うことが許されている。

さらに、介護保険法の改正により、2012年4月からは、一部の医療的ケア(特定行為)に限り、一定の研修を受けて認定された介護士や特別支援学校教員等が行うことが、公的に認められるようになった。

医療的ケア児とは

医療的ケア児とは、医学の進歩を背景として、NICU等に長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、痰の吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な障害児のこと。

0~19歳の歩ける医療的ケア児から寝たきりの重症心身障害児まで、全国で1.9万人(2018年)いる。
医療的ケア児等の支援に係わる施策の動向-厚生労働省より

医療的ケアの具体例

1.呼吸に関する医療的ケア

  1. 人工呼吸器
    神経や筋肉の問題などの理由で、自力での呼吸が困難になった場合に、肺に空気を送り込む器械を人工呼吸器という。顔につけるのは、鼻マスク、口鼻マスク、顔マスク、マウスピースとさまざまな種類がある。
  2. 気管切開
    呼吸困難を助ける目的で、のどに穴をあけて、穴から気管にカニューレという管を差し込み、新たな気道を作成すること。
    新たな気道を通して呼吸が楽に出来る。気管切開をした上で、人工呼吸器を使う場合もある。

    また、気管カニューレの定期的な交換や気管カニューレを固定するバンドの交換(1回/日)、気管切開口周囲の皮膚を清潔に保つこともケアに含まれる。

  3. 経鼻エアウェイ
    鼻からのどまでやわらかいチューブを挿入して空気の通り道を作ること。

    主に睡眠時に使用することが多く、呼吸障害の改善や睡眠の安定させる目的がある。
    これにより、気管切開をしなくてすむ場合もある。

  4. 痰の吸引
    口、鼻、のどに溜まった唾液や痰を、電動吸引機で適宜取り出すこと。
    吸引するためのチューブは、鼻や口、気管切開している場合は、気管カニューレから挿入する。
  5. 在宅酸素療法
    心臓や肺の病気が原因で、自分の呼吸では十分な酸素を取り込めない場合に、酸素濃縮器(室内)や酸素ボンベ(屋外)という器械を使って酸素を補うこと。
    器械に接続したカニューレを鼻の穴に差し入れ吸入することで、体内に酸素が取り込まれる。

2.栄養に関する医療的ケア

  1. 経鼻栄養
    鼻から胃までチューブを挿入し、流動食や薬剤を流し入れること。
    挿入したチューブは位置がずれないように顔にテープで貼り固定する。
  2. 胃ろう
    手術によりお腹と胃に穴を開け、その穴にチューブを差し込み、そのチューブから流動食や薬剤を流し入れること。
  3. 口腔ネラトン法
    食事の時だけ口からチューブを入れ、そのチューブから流動食や薬剤を流し入れること。
    常に顔にチューブが固定されている違和感は軽減される。
  4. 中心静脈栄養法
    鎖骨の上を切開し、そこから中心静脈という心臓近くの太い血管の中にカテーテルという管を差し込み、生命維持や成長に必要なエネルギー、各種栄養素を点滴という形で補給すること。

3.排泄に関する医療的ケア

  1. 導尿
    膀胱に指令を出す脊髄などの神経系の障害が理由で、尿がうまく出せない場合に、尿道口からカテーテルを入れ、尿の排出を助けること。
  2. 人工肛門
    お腹に穴を開け、腸の先端をその穴まで引き出して出来た、人工的な肛門のこと。
    その穴に専用の袋を取り付け、便が溜まったらその都度袋を交換することが必要。また、その穴の周囲の皮膚を清潔に保つこともケアに含まれる。

医療的ケア児が直面する問題

家族の介護負担

在宅ケアでは、医療的ケアのほか、使用する器具やそれに付随する道具の調達や、メンテナンスも必要になるため、家族の負担は非常に大きくなる。

そのため、親が離職しなければならないケースも多く、自宅以外で医療的ケアを受けられる施設のニーズが高まっている。

しかし現在は、NICU退院後の医療的ケア児の受け入れ先は殆どなく、一時預かりさえ難しい。

訪問看護を利用するという選択肢もあるが、小児を専門に扱える看護師は全国的に不足しており、医療的ケア児の増加に追いついていないのが現状である。

就学・就園の問題

医療的ケア児が成長すると、就園・就学問題に直面する。
医療的ケア児が通える保育園や幼稚園が見つからないのである。

保育園や預かり施設では、軽度の障害のある子どもの受け入れはしても、医療的ケア児の受け入れ態勢はほぼ整っていない。

吸引や経管栄養、酸素吸入などの医療的ケアを保育の場で行うには、看護師を配置する必要があるが、看護師を保育施設に配置する余裕がない。

就学についても同様で、通常学級、特別支援学級共に、看護師を配置するか、それが叶わなければ、家族が付き添い待機するかのいずれかになる。

結局、家族の負担は減らない。

医療的ケア児が暮らしやすい社会に向けて

そもそも、小児の在宅医療を支える社会の仕組みや医療的ケア児を総合的にマネジメントする仕組みが未だ整備されていないことが問題であり、早急な対策が必要である。

就学児になれば、学校などの教育機関との連携も求められるため、医療的ケア児を支える仕組みはより複雑になる。

切れ目ない支援を行うには、専門のケアマネージャーが介入し、医療・福祉・子育て支援・教育が一体になってサポートしていく仕組みづくりが重要である。

今後も増えていくであろう医療的ケア児とその家族を支える社会的支援のさらなる充実が求められている。

出典・参照

『「医療的ケア」はじめの一歩』≪クリエイツかもがわ≫

 『医療的ケア研修テキスト』≪クリエイツかもがわ≫

NHK「医療的ケア児 第2回 「医療的ケア」とは何か」

 文部科学省「学校における医療的ケアの実施に関する検討会議(第1回)資料3「学校における医療的ケアへの対応について」」

厚生労働省「喀痰吸引等制度について」

ライタープロフィール

ライター名
ゆっこ

経歴     
16年間、看護師として大学病院・看護専門学校教員・訪問看護など様々な現場を体験。
得意分野は救急看護。

現在は、9歳、5歳の子供を持つ2児の母。
5歳の子供は医療的ケアを行っている。