病気・医療的ケアがある子どもや成人を在宅で介護する時、家族の大きな助けとなるのが訪問看護です。
こちらの記事では、
✅訪問看護ってどうやって頼むの?
✅訪問看護っていくらかかるの?
✅訪問看護ってどれぐらい来てくれるの?
などの、訪問看護の利用を考えている方に向けた様々な疑問にお答えします。
以下の目次↓を見て必要な項目に飛ぶことができますので、必要な情報に早く辿り着きたい方は目次を利用して下さい。
目次
訪問看護とは
訪問看護とは、その名の通り、看護師さんが訪問してくれることです。家に来てくれるんですね。
病気や医療的ケアがある人が家で過ごしたい、退院して帰りたいと思っても、入院中看護師さんがしてくれていたケアを家族でできるのかな…と不安な方もいるでしょう。
または、すでに病気や医療的ケアのある子どもや親が帰ってきているが、家族だけではケアが行き届かなくなってきたと感じている方。
ぜひ訪問看護を利用しましょう。きっと、みなさんの助けになります。
訪問看護師さんってどこから来るの?
訪問看護は、看護師さんが家に来てくれるのだとわかりましたね。では、その看護師さんはどこから来てくれるのでしょうか?
訪問看護師さんは、「訪問看護ステーション」という場所から来てくれます。
訪問看護ステーションとは、訪問看護師が在籍する事業所のことです。看護師の他にも、訪問リハビリをする作業療法士さんなどがいる場合もあります。
訪問看護を実施している病院も中にはありますが、基本的には訪問看護ステーションにお願いすることになるでしょう。
訪問看護って誰でも利用できるの?
訪問看護は、年齢や病気・障がいの種類に関係なく、医師が「訪問看護が必要と判断した場合」に利用できます。
利用できるのは、長期にわたる看護や介護の必要がある人だけではありません。例えば退院後にしばらく術後のケアが必要とか、家でのお薬の飲み方の指導など、そういった場面でも利用が可能な場合があります。
医師や、ソーシャルワーカー、ケアマネージャーなどに相談してみましょう。
訪問看護っていくらぐらいお金かかるの?
ここは本当に気になるところですよね。
訪問看護は、無料ではありません。ですが、保険が効きます!
もちろん、24時間365日来てもらうことはできません。週○回までなどの保険の適用範囲があります。
訪問看護を受ける人の年齢や状態によって介護保険と医療保険のどちらを使うかが決まり、それにより訪問回数や時間の上限が変わります。(上限を超えた分は全額自費になります)
どちらの保険を使うのか、また子どもか成人かでも金額が変わってきますので、順番に解説していきますね。
お子さんの場合(医療保険)
医療的ケア児が訪問看護を利用する場合、お子さんの年齢や住んでいる自治体にもよりますが、保険が効く範囲内なら料金は基本的に無料です。
それは、多くの自治体で、12歳以下の子どもの医療費は無料になっているからです。
訪問看護も、この子どもの医療費助成の範囲に含まれます。
ちなみにこの「保険が効く範囲内」は、医療保険の場合は週の訪問回数と時間です。これは、訪問看護を受ける人の状態により上限が変わります。
ここは、後の項目「訪問看護ってどれぐらい来てくれるの?」で詳しく解説します。
40歳未満の成人の場合(医療保険)
この場合は、保険が効く範囲内で基本的に3割負担です。
訪問看護は、自費で利用すると1時間1万円ほどと言われています。そこに、交通費や看護の内容によって料金の加算が付くことがあります。ステーションによっても違うので、事前に確認して下さいね。
ちなみに訪問看護費も、高額医療費制度(毎月一定額を超えた医療費が返ってくる仕組み)の対象になります。
40歳以上で、要介護認定されている人の場合(介護保険)
介護保険は、要介護認定の段階ごとに支給限度額が定められており、保険が効くのはその金額までです。
この場合、要介護度に応じて月額利用限度額が変わります。
その範囲内で、利用者の自己負担額は1〜3割です。
40歳以上で、要介護認定されていない人の場合(医療保険)
基本的には、「40歳未満の成人の場合」と同じですが、年齢や収入により自己負担額は1〜3割と違います。
訪問看護を利用する人が、医療費が何割負担なのか確認してみましょう。
訪問看護ってどれぐらい来てくれるの?回数は?時間は?
訪問看護って、週に何回来てくれるんでしょうか。そして、時間は1回につき何時間までとか制限があるのでしょうか?
もちろん、全額自費で頼めば制限はありませんが、自費で訪問看護を頼むとなると、1時間に1万円ほどかかると言われています。
なので、ほとんどの方は保険適用の範囲内でお願いすることになるでしょう。
そして、利用する保険が医療保険と介護保険のどちらなのか、また利用者の状態によって、回数や時間の上限が変わってきます。ここはちょっと難しいので、順番に解説していきますね。
医療保険を使う場合
医療保険の利用上限は、「週の回数」で決められています。
基本的に「週に3回までで、1回の時間は90分まで。1箇所のステーションから看護師1人まで」と決まっていますが、特別な場合にはこの制限が外れます。
その特別な場合とは、
- 厚生労働大臣が定める疾病等
- 厚生労働大臣が定める状態等
- 医師の特別訪問看護指示書
がある場合です。
このうち、①と②に該当する場合は、週4日以上、複数の訪問看護ステーションからの訪問が可能になります。
また、③の特別訪問看護指示書がある場合は、「最長14日間連続・1日複数回・週4日以上・複数ステーション利用・看護師2人対応・90分以上の利用も週1回まで可能」と、かなり手厚い看護サービスが保険適用の範囲内となります。
この「特別訪問看護指示書」は、医師がそれだけの訪問看護が必要だと認めるための条件があり、
- 急性憎悪
- 終末期
- 退院直後
がその条件となっています。退院直後に利用する場合は、「退院するその日から」の利用が可能であり、退院前に医師やソーシャルワーカー、訪問看護ステーションと連携して在宅看護の状態を整えておけば、家族の負担はかなり減るでしょう。
特別訪問看護指示書は、必要だと感じたら医師やソーシャルワーカーに相談してみましょう。
【東京都における在宅人工呼吸器使用難病患者への補助について】
東京都では、在宅で人工呼吸器を使用する難病の患者さんに、医療保険の範囲を超えて訪問看護を利用した額を補助する制度があります。詳しくはこちらをご覧ください↓
介護保険を使う場合
次に、介護保険を使う場合です。
介護保険の適用範囲は、上限が「1ヶ月の金額」で決められています。
要介護度に応じて月額利用限度額が決まっており、例えば1ヶ月10,000円が限度額だとしたら、その範囲内で、月に何回訪問看護を利用してもOKです。
ケアマネージャーが作成した「ケアプラン」に基づき、1日に複数回・毎日でもOK・複数ステーションが利用可能になります。
1回の訪問時間は、20分〜90分ぐらいから選びます。
医療保険と介護保険はどちらが適用になる?
医療保険と介護保険で、だいぶ利用できる回数などが違いますよね。どちらの保険が適用になるか?が気になる方も多いと思います。
これは、「介護保険が優先」です。そして、介護保険が適用にならない場合に、医療保険が適用になるのです。
もちろん、40歳以上ですでに介護保険を使って訪問看護を利用している方でも、病状が悪化したり状態が変われば、医療保険に移行します。もちろんその逆もあります。
また、訪問看護ステーションはどちらの保険にも対応しています。保険が変わるからといって、ステーションを変える必要はありません。
訪問看護師さんが来てくれる時間って決まってるの?
さて、訪問看護師さんは1日のうち、何時ごろ来てくれるの?ですが、これはステーションとの話し合いで決まります。
だいたい「毎週○曜日の○時から」とか、毎週同じ曜日の同じ時間に来てもらう方が多いようです。
例えば、
- 月曜日は家族が出勤するので午前10時から
- 水曜日は自宅でお風呂に入れてほしいから午後3時から
- 金曜日はデイサービスに行って帰ってくる時間に合わせて午後5時から
などですね。
深夜や早朝など、特別な時間の利用も可能?
24時間対応している訪問看護ステーションならば、深夜や早朝に来てもらうこともできます。この場合別料金がかかることもあります。
また、「経管栄養の管が抜けちゃった!」などの時、緊急時に呼べば来てくれるステーションもあります。
時間をずらしたり変えることはできる?
訪問看護ステーションによって、「予定時間の○時間前までに連絡すれば時間の変更が可能」のように決まっていることがほとんどです。
ご利用のステーションに確認してみましょう!
訪問看護ってどんなことしてくれるの?
具体的に、訪問看護師さんってどんなことしてくれるのか気になりますよね。
訪問看護師さんは、本当に色々なことをしてくれますよ!
- 栄養剤やお薬の注入
- 食事介助や服薬
- 吸引などの医療的ケア
- おむつを取り替えたりなどの排泄ケア
- お風呂、清拭などの清潔ケア
- 見守り
などをお願いできます。
点滴などの医療行為をしてもらう場合は、医師の指示書が必要になります。医療行為以外の、排泄ケアや清潔ケアなどは、医師の指示書がなくてもやってくれます。
訪問看護師さんってどんなことしてくれるの?
訪問看護師さんにお願いしていた1日のケアスケジュール公開
訪問看護師さんが来てくれる場所
保険を使って訪問看護を利用する場合は、基本的に訪問先は自宅などの「居宅」でなければいけません。(末期がんの場合や、医師の特別訪問看護指示書がある場のみ、特別養護老人ホームやグループホームなどの住居系サービスで利用できます)
ですが、自費で利用できる訪問看護サービスを提供している事業所もあり、「旅行に行きたいのでその間ついてきてほしい」などの個別の訪問看護サービスに対応しています。
家族の思い出のために旅行に行きたい、また医療的ケア児が通学する際にどうしても付き添いができないなど、そういう場合は自費で訪問看護サービスを頼むこともできます。
お金はかかりますが、場所や時間などの制限がなくなり、訪問看護を利用できる範囲は大きく広がります。
訪問看護師さんは同じ人に頼めるの?また変えてもらうことはできる?
人間なので、どうしても来てくれた訪問看護師さんが合わないこともあります。
また排泄や清潔ケアをお願いするため男性看護師がいい・女性看護師がいいなどの希望もありますよね。
毎回同じ看護師さんに来てほしい・または来てくれる看護師さんを変えてほしいなどの希望はステーションに相談すれば対応してくれますし、何ならステーションごと変えることだってできます。
訪問看護の申し込み方
それでは最後に、申し込み方です。
これは訪問看護ステーションに直接電話で大丈夫です!親切に教えてくれますよ。
また、ソーシャルワーカーさんやケアマネージャーさん、保健師さんが紹介してくれる場合もあります。もちろん病院に聞いてもいいですし、行政の福祉や医療の窓口に聞いても教えてくれます。
訪問看護とその他のサービスとの組み合わせ
事業所によっては、訪問看護と在宅レスパイトなどの複数の制度を組み合わせて、長時間連続した訪問を実現しているところもあります。
また、訪問看護師さんの訪問時間が終わる頃にヘルパーさんが来るようにお願いするなど、違うサービスを連続して頼むなどの工夫もできます!
もちろん、公的保険と自費を組み合わせて訪問看護サービスを利用することもできます。
最後に
訪問看護を利用するということは、病院で行っていたケアを自宅でするということです。
- 医療的ケア児をこれから自宅で育てる
- 親が要介護状態になった
- 病気で様々なケアが必要だけど自宅で過ごしたいという希望がある
- ターミナルケアが必要になった
など、様々な状況があるでしょう。
そこには不安もあるし、実際ケアは本当に大変だったりしますよね。
訪問看護は、なるべく必要な人が必要なだけ利用できるよう設計されています。それらを知っておくことで、家族の負担は大きく減るでしょう。
大切なのは、一人で悩まないことです。
相談支援専門員・医療的ケア児等コーディネーター・保健師・ケアマネージャー・市区町村の福祉課窓口・退院指導看護師など、たくさんのサービスや人が、あなたを助けてくれます。
困ったら色々なところに相談して下さい。
ケアを受ける方やご家族の生活が、より良いものでありますように。
【参考資料】意外と知られていない訪問看護の基礎知識 佐久医師会ニュース