この記事は、アンリーシュパートナーズ様(毎月定額寄付)の提供記事です。
Hinata 様よりご支援をいただき、完成いたしました。
日頃より貴重なご支援を賜りまして、ありがとうございます。
医療的ケア児家族が誰しも悩む就学問題。
しかし、就学ができたらゴールではありません。学校に通うようになってからは、運動会や音楽会、校外学習や宿泊学習など、さまざまなシーンで話しあわなければいけないことがたくさんあります。
その中で、どうしても問題になってくるのが保護者の付き添いです。
運動会や音楽会であれば、他の保護者と一緒に観覧をしながら見守ることができます。しかし、校外学習や宿泊学習となれば話は別物です。
常時看護師が配置されている場合とされていない場合で、保護者の付き添い度合いも変わってきます。
今回は、地域の小学校の病弱児学級に通うアンリーシュフレンズのあいちゃんが経験した宿泊学習について紹介します。
学校行事の付き添いに悩むご家族や、これから付き添い宿泊について動き出すご家族の力になれたら幸いです。
付き添いの現状
あいちゃんは、地域の小学校の病弱児学級に在籍しています。看護師配置がされているのは、給食の時間のみです。
4時間目の終わりからお昼の栄養剤注入が終わる1時間半のあいだ、訪問看護師さんが学校に行ってくださいます。
去年からは、校外学習もお昼の時間であれば看護師さんが現地で医療的ケアをしてくれるようになりました。しかし、お昼の時間以外は保護者の付き添いが必要になります。
いつもと違う環境や移動距離によっても体調が不安定になりがちなあいちゃん。どうしても保護者の付き添いは余儀なくされます。
それが、宿泊をともなう学習となれば大きな問題です。参加が可能なのか?どの活動に参加ができるのか?という話にもなります。
宿泊学習にむけて
看護師配置要望
夜間の低体温や医療的ケアが多いあいちゃん。宿泊学習には保護者の付き添いは必須と言われていました。
しかし、日中の活動はなるべく保護者から離れてお友だちと一緒に過ごす経験をさせてあげたい!とDrに看護師配置の要望書を書いていただきました。しかし、娘だけのための看護師配置は難しいという回答でした。
そのため、生徒全体に配置されるアテンダントナースさんが保護者と一緒に見守るということになりました。
医療的ケアに関しては全て保護者が管理をすること。体調チェックや緊急時の判断はアテンダントナースさんにも協力いただけるように準備をしました。
宿泊学習にむけて
毎日、娘のことを見ている先生たちも1日の過ごし方や医療的ケアは知りません。
まず、宿泊に関して不安に思っていることや、娘が参加したいと希望している活動をまとめました。胃ろうがついているあいちゃんが1番に参加したいと希望したのは、命綱を付けてのアスレチックでした。
Drにも相談しました。命綱を付けて吊られる状態で胃ろうに当たらないかを確認すること。また、胃ろうが外れたときに、胃ろうの交換ができるように手技を覚えました。病院から胃ろうキットの貸し出しの許可もしていただきました。
そして、一緒に活動する子どもたちに説明をする時間をいただけるようお願いしました。
・医療的ケアの説明
・保護者が付き添うこと
・みんなの前で医療的ケアをすること
・みんなと宿泊学習に参加することを楽しみにしていること
子どもたちの反応は「やったー!あいちゃんと一緒にいける」「アスレチック応援するね!」と、前向きに受け入れてくれた印象でした。
1泊2日の宿泊学習
思い通りにいかないことも…
事前に何度も先生たちと話し合いをし、細かくスケジュールも決めていました。しかし、当日はあいにくの雨。
バリアフリーといわれていた道にはたくさんの石。雨が降り車イスの移動も困難でした。抱っこでの移動や休憩をしつつの移動は、体力がない娘には大きな負担でした。
また、食事の量も思っていたより少なく、水分もじゅうぶんに摂ることができませんでした。栄養剤の注入回数を増やし、水分も胃ろうから注入しないといけない状態でした。
普段の学校生活よりも活動量が多く、活動中に休憩をとることもありました。
先生や子どもたちに支えられて
1番「やりたい!」と希望していた命綱をつけてのアスレチック。
危険を判断したりSOSを伝えることが苦手な娘。心配する大人を横目に「あいちゃん難関コースいく!」と張り切っていました。
しかし、命綱をつけ吊られてみると胃ろうの下ギリギリでした。娘は「危ないから1番簡単なコースからチャレンジしてみる。」と判断しました。
アスレチック以外にも、胃ろうや体力面でセーブするという判断をする娘をみて成長を感じました。
しかし、みんなと一緒にしたいことができないもどかしさで、気持ちが落ちてしまわないかと感じる場面もありました。
そんな時に、「あいちゃんの近くで一緒に応援するね!」「私がいるから大丈夫だよ。」と声をかけてくれるお友だちの姿がありました。
家族から離れ不安な中、
・時間やルールを守る社会性
・自分のことだけじゃなく周りのお友だちの様子を見て行動するやさしさ
・はじめてのことにもチャレンジする力
を子どもたちは一生懸命学んでいました。
最後まで悩んでいた宿泊学習中のお友だちとの入浴。しかし、優しい声かけに後押しされて一緒にお風呂に入ることもできました!
先生たちのやさしい声かけや見守りの結果、娘も安心して1泊2日を乗り越えることができました。
今後の課題
はじめは、お友だちと同じように家族と離れて宿泊学習をさせてあげないといけないと思っていました。
しかし、今回の宿泊学習を終えて感じたことは、『安心して預けられる環境が整っていないと付き添いなしの宿泊は難しい』ということです。
支援学級のあいちゃんの場合は、お昼の時間にしか看護師配置がなく日中の体調見守りは教育を教えるはずの先生です。宿泊をするとなると、普段の様子を知り対応できる医療者がいないということは大きな壁でした。
お友だちと同じように社会性や自立を学ぶ授業を経験させてあげたかった。
しかし、安心して預けられる環境ではないのに無理をして体調をくずしてしまっては、意味がないのではないかと感じました。
本当は一番お友だちと同じように宿泊させたかったのはわたしではないか。。。そう感じました。
特別支援学校や支援級でも地域によって支援の差があると聞きます。その中で地域の小学校の支援学級に通う動ける医療的ケア児はまだまだ少ないです。安心して宿泊学習に預けられる環境が整うには時間がかかるでしょう。その中で今回、付き添いをしてでも宿泊学習に参加したのは大きな一歩だったと感じます。
今回の経験が今後の糧となることを願っています。
アンリーシュ理事・運営メンバーとして活動。
医療的ケア児と発達障がい児を育てる3児の母。
医療的ケア児家族と社会を繋ぐ架け橋となることを目指し活動中!