【気管切開】中学3年生ひなちゃんのリフトを使った入浴~住環境整備費制度の活用~

この記事時は、アンリーシュパートナーズ様(毎月定額寄付)の提供記事です。
mirai よりご支援をいただき、完成いたしました。
日頃より貴重なご支援を賜りまして、ありがとうございます。

 

心も身体もほっこりとリラックスできて誰もが大好きな「お風呂」
いつまでも毎日お家で入浴させてあげたい!
そう感じているご家族さんも多いのではないでしょうか。

しかし、子どもも成長し体が大きくなると、家族の負担も大きくなり困難になって来ますよね・・

今回は、自宅に『リフト』を取り付け毎日安全に入浴介助されている、
Hinataさんにお話をお聞きし、執筆いただきました。

ひなちゃんプロフィール

名前: ひなちゃん(ひなた)

年齢: 15歳・支援学校中学3年生

疾患名: トラベ症候群

重度のてんかん重度重複障がい(知的・肢体)

医療的ケア: 胃ろう(4歳の時)・気管切開(喉頭気管分離術、5歳の時)

ひなちゃん

リフト設置を考え始めたタイミング

5歳で気管切開をしてから呼吸が楽になり、
そこに使っていたエネルギーが減ったことで、
急に体重が増え、成長期も重なって身長もぐんぐん伸びはじめました。

小学校入学のときには、一番大きな車椅子に乗っていたひなちゃん。
小学3年生ごろには身長120㎝、体重20㎏を超えてきました。

身長が伸びたことで、
入口や壁に足や頭をぶつけそうになり
ひなちゃんの身体の危険を感じました。

また、ママの腰の負担も大きくなり、
周りでぎっくり腰になっている人が
介助できなくなった話も聞いたことがあったので、

いつまでも抱っこで移動は難しいと感じ、
リフトの設置を考えはじめました。

福祉機器展で実際使ってみて、
首が座ってなくても安心して使えそうだと
わかり、一歩踏み出しました。
また今後、入浴サービスを利用する可能性もあるので、
ほかの人にお願いする場合のことを考えて
リフトの必要性を感じました。

リフトを使って入浴

入浴前のケア

口の中の唾液と気管の痰を取ってから、
気管切開部に水が入らないように、
当てているガーゼの周囲(左右下3辺)を太めのマイクロポアテープを止め、胃ろうガーゼを外します。

入浴前気管切開部保護

普段自宅で過ごすときは、ガーゼの上側を2本、テープ止めしています。

気切ガーゼ普段のようす

準備

浴室の床に、お風呂用マットを敷きます。

その上にお風呂用ビーズ枕(市販)を準備します。
(頭を高くすることで気管切開部に水が入らないようにするため)

 

用意するもの

バスタオル2枚: 水分をふき取る用と身体の上に掛ける用。
タオル1枚: 気管切開部に水が入らないように周りに土手を作る用。
スリングシート2枚

入浴の流れ


ベッドの上で洋服を脱いで、リフト用スリングシートを身体の下に敷き込みます。

スリングシートを敷きこんだら、
ベッド用リフトでシャワーチェアへ移乗します。

スリリングシートを使い、ベッド横リフトでシャワーチェアへ移乗

シャワーチェアを押して浴室へ移動し、
浴室内リフトが届く位置まできたら、
リフトを使って湯舟につかります。
その後、またリフトで上下し浴室の床に降ります。

浴槽につかる

気管切開部の周囲にタオルを土手のようにして置き、
胸にかかったお湯が気管へ入っていかないように注意します。

身体を洗い終わったら、リフトを使い
湯舟につかって、シャワーチェアに移動します。

このとき、シャワーチェアにバスタオルを
敷いておくことで、シャワーチェアが濡れるのを防ぎます。

濡れていないスリングシートに入れ替えて、身体を拭いてお部屋へ戻ります。

シャワーチェアとスリングにタオルを載せる

シャワーだけのときは、スリングシートは1枚のみ
使用し、身体を洗う前後に敷き直します。

お部屋に戻ったら、リフトでベッドへ戻り、
全身に保湿剤を塗ってスキンケアをします。
皮膚が薄くて赤くなりやすい部分(骨の出ているところ、膝など)にはワセリンを塗っています。

趾間は白癬になりやすいのでしっかり水分をふき取ります。

お年頃なので、顔は化粧水と美容液と保湿剤を塗っています。

お口の唾液と気管切開部の痰を取って、
気管切開部周囲はおしりふきシートで清拭し、新しいガーゼを当てます。

胃ろう周囲に軟膏(抗真菌薬)を塗って
Yガーゼを当てます。
そして、耳掃除・口腔ケアをします。

これからリフトを検討されている方へ

アドバイスや注意点

いつまでもかわいいのですが、
身体はしっかりと成長してきます。

ずっと一緒にいていつまでもだっこできるように、
自分の健康を大事にしたいと思いました。

家族が腰を痛めると、短期入所にお世話になる可能性もあります。
短期入所があれば良いですが、
身体が動かなくてお世話してくれる人もいなかったら一体どうしたらよいか…。

リフトは急にはつけられないので、
早め早めにリハビリセンターや役所に相談することをお勧めします。
また、福祉機器展や福祉機器センターなどでまずは使い心地を確かめてみることもお勧めします。

そして、人の目で安全を確認しながら使用します。
機械なので、しっかり上げ下げしてくれる一方、
巻き込み事故や周囲にぶつかったりなど危険もあります。
必ず移動中は身体を支えながら移動しています。

『住環境整備費制度』を使っての改修工事

お風呂リフト・ベッド横リフト・庭に段差解消機(もちあげくん)

私の住んでいる地域では、住環境整備費の助成があります。

助成内容は、浴室やトイレなどを
改造するための費用や機器の購入費、取り付け費の一部で、対象の手帳等と限度額が決まっています。

また、市民税額に応じた自己負担があります。
リハビリテーションの専門職が、住宅改造などについて、相談・助言・情報提供をしてくれます。
窓口は地域の福祉保健センターです。

『住環境整備費制度』については、
地域によって内容や助成金額等に違いがあるようです。

お近くの市町村窓口へ問い合わせてみてください。

まず、家のどこにひなちゃんのベッドを
置くか、そして外出までの動線を考えリビングの横が庭と駐車場だったため、
リビングにベッドを置き、リビングの窓から出入りすることに決めました。

窓と庭との段差解消をスロープにするか、
もちあげくんにするかについては、家の基礎が高く
スロープだととても長いスロープとなってしまいます。

もちあげくんだとメンテナンス費はかかりますが、スペースも取らずに段差解消が可能なため、もちあげくんに決めました。

もちあげくん移動写真

もともと土の庭だったので、穴を掘って
もちあげくんを設置してもらい、
車椅子を回転させるためにウッドデッキを作成してもらいました。

そして、駐車場と繋がっているため、
そのまま車両にのることができるようになりました。

当初、車椅子をリビング内へ入れることに
抵抗があり、窓ぎりぎりにリフトを取り付けて
もらって、ウッドデッキに停めた車椅子から
リフトを使ってベッドへ移動することにしていましたが、
実際夏は窓を開けっ放しにしたら蚊が入るし、
冬は寒いので、車椅子のままリビングに入ることにしました。

フローリングが傷つかないようにジョイントマットを敷いています。

お風呂のリフトは、天井裏で電気系統をつないで、設置してもらいました。

お風呂リフト全体

天井にレールを這わせて、浴室とベッドの移動ができる工事もありましたが、
柱の関係で浴室へのドアの間口が広げられず、
大がかりな工事となりそうだったのでシャワーチェアで移動をすることに決めました。

 

工事までの流れ

① リハセンターで相談
② リハセンター住環境専門OT・相談員、業者の訪問
③ 福祉機器を体験しに行く
役所に相談
⑤ ケースワーカー同席で専門OTと業者と購入予定の福祉機器を体験する
(スリングシートのサイズや種類を決める等)
⑥ 必要な工事の内容を具体的に決める
⑦ 調査員、ケースワーカー立ち合いの下、適切な改造工事案であるか自宅調査
⑧ お見積り
⑨ 助成決定通知所が届く
⑩ 工事(1か月程度)・自己負担金支払

カーポートなど移動に関係のない場所の工事は自費でしたが、同時に実施してもらえました。

リフト1台につき、スリングシートが
1枚ついてきます。

シャワーチェアは入浴補助用具として、
日常生活用具という制度を使い購入しました。

タイヤの部分と椅子の部分が分かれて、
椅子の部分をリフトで移動し湯舟に浸かれるタイプと、
分かれないがリクライングができてフラットになるタイプがあります。
気管切開があっても頭が洗えるように、フラットのタイプを選びました。

シャワーチェア

アフターフォローやメンテナンス

・庭に設置した段差解消機もちあげくんは、
年1回、メンテナンスがあります。
自費で2万円程度必要です。

・リフトは、利用時間が累計400時間経過するとメンテナンスアラームが鳴ります。

・リフトを安全に使用するために、
リハセンターから住環境専門OTが設置して1か月後くらいに自宅まで様子を見に来てくれました。

取り付けても使用していないと、
いざというときにも使えないし、
腰を痛めてからでは遅いので、元気な頃から日常的にきちんと使うようにしてくださいと言われています。

母の想い

リフトを取り付けた当初は、
ひなちゃんがリフトで吊られるなんて、かわいそうでしぶしぶだったのですが、
姉に「ひなちゃんもアトラクションみたいで意外と楽しいかもよ」と言われ、
そんな考え方もあるのかと、前向きになりました。

いつまでもだっこできるために普段の移動はリフトを使うというように考え方を
切り替えてからは、できるだけリフトを使用するようになり、今ではお風呂の時などリフト無しでは考えられないです。

お風呂がだんだんと重労働のように
なってきてしまい、1日の大きなdutyのように思えてしまって、
ひなちゃんが小さいときはあんなに楽しかった
お風呂だったのに、身体的な負担が精神的な負担へと変わってしまっていました。

「お風呂に入れなきゃいけない。」
こんな風に当たり前に思ってしまっている自分がいて。
疲れて・・

身体が動かず夜中にお風呂に入ることもありました。
いつもだっこしていれてくれる
パパのことも負担が大きいのではと心配でした。

でも、本来お風呂はリラックス出来る時間
だったり、ひなちゃんの身体の緊張がほぐれたり、
ふれあいの時間だったりと、
楽しい時間であり、このままでは
ひなちゃんが悲しんでいるかもしれないと感じました。

そして考え方を見直すことで、本来のお風呂を楽しむことができるようになりました。

身体の負担をとってくれるひとつとしてリフトを活用し、安全でお互い身体も楽に入れることをお勧めします。



YouTube「アンリーシュ日記」でも詳しくご紹介しています。
ぜひご覧ください!

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