医療的ケア …それは誰にとっても他人事ではありません。
高齢化や難病の増加・そして医学の進歩により、医療機器を使いながら生活する人が増えています。
その中でも大きな社会課題の一つとなっているのが、「医療的ケア児」と呼ばれる子供達です。
目次
医療的ケア児 とは
医療的ケア児とは、日常生活で医療行為を必要とする子どもたち。
「世界でもっとも赤ちゃんを救う国」と言われる日本は、新生児医療の発達と共に、生後500gに満たない赤ちゃんでも命を救えるようになりました。
一方で、生きるために常に医療行為を必要とする子どもも増え、その子たちは「医療的ケア児」と呼ばれています。
「医療的ケア児」…それはまだまだ馴染みのない言葉です。どんな子どもたちなのでしょうか?
例えば、こんな例が挙げられます。
代表的な 医療的ケア
お腹に穴を開ける「胃ろう」
食べ物を飲み込む機能が低下している子どもや、口から十分に栄養が取れない子どもたちは、「おなかに小さな口」を造る手術を行い、チューブを通して栄養を注入します。
これが「胃ろう」です。
【参考動画】
医療的ケア児胃ろうからの注入の様子大公開!
【在宅での医療的ケア児】胃ろうで食べる栄養剤の作り方!!
たんを取り除く「吸引」
「たんの吸引」は、たんの飲み込みが上手くいかず、喉元に停滞し呼吸が苦しくなってしまう場合や、誤嚥(気管内に流れ込んでしまう事)の可能性がある子どもたちに必要な医療的ケア。
チューブを鼻や口、気管切開している場合は喉元から挿入し、たんを吸い出します。
他にも多様な医療行為が存在し、子供達は生命維持に必要な機能を医療機器に助けてもらいながら生活しています。
増加している医療的ケア児
現在国内に19,000人いると言われている医療的ケア児ですが、その人数は増加傾向にあります。
多くの赤ちゃんが医学の進歩で命を救われる一方で、地域での受け入れ先は追いついていないのが現状です。
今までにない障がいカテゴリー「医療的ケア児」
皆さんが「障がい児」と聞いて思い浮かぶのは、「重症心身障がい児」と呼ばれる、重度の肢体不自由と知的障がいが重なった子どもたちではないでしょうか。
日本における障がい児の分類は「大島分類」という指標に基づいており、
- 身体をコントロールする力(座ることができる、立てるなど)
- 知的能力(IQ)がどの程度あるか
という2つの軸によって、障がいレベルが判定されていました。
例えば、知的な遅れがなく自分で歩くこともできるが、胃ろうからの栄養注入が必要な医療的ケア児は、この分類では障害がないということになってしまいます。
このように、医療的ケア児は既存の障がい児者支援の法制度の枠組みに入ることができず、国や自治体の支援を受けることができない現状があります。
医療的ケア児の家族を取り巻く問題
保育園に通う・預け先を見つける事が困難
多くの場合、医療的ケア児は普通の保育所には通えません。
医療的ケアは看護師や訓練を受けたヘルパーが行う必要があり、保育施設には医療的ケアが可能な看護師の配置や、設備の充実が進んでいないためです。
また、障がい児が通う児童発達施設においても、同様の理由で医療的ケアのある子どもは断られてしまうケースがほとんどです。
そのため、両親、特に母親が仕事を辞め、子どもにつきっきりにならざるを得ないという家庭が非常に多くなっています。
ですがこういった就学に関する問題を行政やNPOが議論し改善していこうとする会議も行われ、社会は少しずつ変わろうとしています。
在宅医療へ移行する苦労
医療的ケア児の8割は出産後NICUに入院し、長期の治療を経て自宅に戻っていきます。
病院の医療関係者は、医療に関する知識は伝えることができても、退院後に必要な福祉制度やサービス資源、子育てに関する情報を十分に持っていません。
そのため、家族は情報不足と不安を抱えたまま自宅に戻り、必要な福祉用具やその使い方、利用できる公的な福祉サービス、さらに自宅での栄養注入や入浴のさせ方など、日常的なことすべてを一から模索していきます。
また、特に退院時は想定外のトラブルが起きやすい上、周囲に同じような境遇の家族がいない・外出が難しいことなどから、気持ち的に追い詰められてしまう家族が少なくありません。
医療的ケア ・介護負担が家族に重くのしかかる
医療的ケアは家族、および医療従事者や訓練を受けたヘルパーしか行う事ができず、日常のケアは家族が一身に背負っています。
医療的ケアは生命維持に必要な行為であるため、24時間必要であり、家族は慢性的な睡眠不足や疲労感に苦しみます。
また子供との外出が困難な場合、ケアしている母親も外出する事が困難であったり、子供と離れる時間が取れないなどの問題に直面します。
医療的ケア児と共に生きる
子供に医療的ケアが必要になると、家族の人生は大きく変化します。
その変化に戸惑ってしまう事も多いでしょう。
しかし、医療的ケアがあっても、子供達は変わらずお友達と遊んだり、お出かけしたりする事が大好きです。
医療的ケアがあるから、行き場を失ってしまう。家族に全ての負担がかかってしまう。
そんな現状を社会全体で払拭し、医療的ケアが必要であってもその家族らしい人生の選択ができる。
アンリーシュではそんな社会作りを目指していきます。
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