地元の公立高校から特別支援学校の高等部に転校。メリットや、卒業後の進路について【特別支援教育②】

前回、

特別支援学校と特別支援学級の違い。メリット・デメリットを在籍していた私が解説!【特別支援教育について①】

という記事を書き、私の幼児教育から義務教育課程までの経験を交えながら、通常学級・特別支援学級・それぞれの違いやメリット・デメリットをお伝えしました。

今回は高校編です。

高校では、私は1〜2年生は地元の公立高校の通常学級に在籍し、3年生で特別支援学校に転校しました。

私がそれぞれの学校を選択した理由、また修学旅行でのエピソード、さらに卒業後の進路についても触れていきます。

ただ、私は専門家ではありませんので、すべてが正しい情報や意見ではありません。個人の見解も含んでいますのでご了承ください。

【体験談】私の高校時代!地元の公立高校から特別支援学校に転校

みなさんの中には、中学校を卒業したら高校に行くのが当たり前のように思っている方もいると思います。特に、特別支援学校に通われている方はそのまま高等部に進学するものだと思っていませんか。

でも、高校以降は義務教育ではないので必ず行かなければならないところではありません!
勉強が嫌いだったり苦手な方は無理して行く必要はないんです。

また、学びたい人にとっては本来、病気や障害・医療的ケアの有無に関係なく学べる場所です。私たちは選択する権利があります。

自分がどの道に進みたいのか、或いはお子さんにとってどの選択をするのが一番なのか。

是非、広い視野を持って、一人で悩まず家族や周りの話やすい人と一緒に考えていただけたらと思います。

【高等学校①】2年生までは地元の公立学校。選んだ理由、メリットやデメリット

私立高校を検討したり、肢体不自由教育を行っている特別支援学校高等部を見学しましたが、最終的に私は地元の公立高校に入学しました。

理由は、

  • 制服がかわいい。すごく単純ですが年頃の高校生にとっては大切です。
  • 校舎が比較的新しいため段差が低い。冬は隙間風も少なく暖かい。肢体不自由者にとって物理的環境はとても重要です。
  • 進学校であること。卒業後に何をしたいか決まっていなかったため、全日制と定時制の二課程があり、進学と就職の両方を視野に入れて生活できるのは大きかったです。

 

私立高校を選ばなかった理由は、

  • 当時、校舎がとても古くて階段が高くて昇降が大変。物を持っていない時は手すりをつかむことができますが、教室移動でクラスから椅子を持ちながらの移動を想定した時、両手が塞がったら降りられない高さでした。
  • 勉強の内容が易しいため、自分の学力に合っていない。進学に力を入れている学校ではないため将来の選択の幅が狭くなる。
  • 仲良かった友達と離れてしまう。
  • お金がかかるため両親に負担がかかる。

 

ただ一方で、

・障害による物理的バリアは、事前相談の上で入学前にできる限り取り除く。
・必要な科目や行事のときにサポートの教員を配置できるようにしたい。
・持病のある人や外国人の生徒も受け入れた経験がある。

など、支援に関して前向きなお話も頂いていました。

学校にもよると思いますが、私立校の方が行政が関わることなく学校独自で決められることが多く、建物の改修や外部の支援者が学校に出入りするなどの環境も作りやすいのではと感じました。

もし私が高校入学段階で医療的ケア児だったら、付き添い無しで通える学校として私立を選んでいたかもしれません。

 

受験時は、母が学校の保護者説明会の時に個別で相談に行ってくれました。「娘は、肢体不自由なのですが、入学できますか。」

学校側の回答はシンプルで、「学力が備わっていればこちらは問題ありません。」

当時は、受験時に配慮が必要な生徒のための条例規則がなかったので、問題を速く読む練習をしたり少ない文字数で回答できる方法を研究しました。

現在は、事前に申請をすると別室で受けることができたり、拡大鏡の使用や試験時間の延長などができます。

 

入学後は、特に配慮や支援はなく、行事は文化祭とマラソン大会は通常参加、体育祭はできる種目のみ参加していました。普段の授業は板書が速くてノートを取れないので、友達に見せてもらっていました。

体育の授業は、高校レベルになると動きが活発でほとんど出来なかったので、実技試験の代わりにレポートを提出して単位をもらっていました。

2年生からは少しずつ生活にも慣れ、自分で障害のことを説明したり配慮事項について教員に相談できるようになりました。

担任と母と養護教諭(保健室の先生)で連携をとり、各教科の先生に伝わったことで授業中の水分補給を許可されたり、自然にクラスメイトが助けてくれるようになりました。

 

学校は、障害者を受け入れた経験がなく最初は戸惑っている様子も見られました。

ここでも大切になるのは、受け入れ先で実際に関わる人たちが、当人の障害や性格・保護者の願いなどを理解し、当人を障害の有無に関係なく「ひとりの人間」として受け入れられるかどうか」ということです。

周囲の人に恵まれ、私を受け入れてもらえたこと。また、理解してもらうために自分自身が努力したことで、自分の望む生活を楽しく送ることができました。

さらに、後でも説明しますが、修学旅行の時に、日頃良い関係性を築いてきたことがすごく役に立ちました。

メリット
・たくさんの人と関わることができ横の繋がりができる
・大変だけど勉強が楽しい
・同じ目標を持つ仲間と高め合うことで、私生活でも成長を感じられる
・制約が少なく自由が利く

デメリット
・宿題や提出物が多い
・教科書が多く学校に置いて帰れない
・教室の通路が狭い
・修学旅行の参加に医師の診断書の提出を求められる

【高等学校②】3年生で特別支援学校高等部へ転校。選んだ理由・メリット・デメリット

2年生まで高校で過ごしましたが、3年生になるタイミングで特別支援学校高等部に転校しました。

1年生の夏休み明けくらいから、体調が悪くて欠席・遅刻・早退が増え、現在に繋がる体調の変化がこの時から始まりました。

転校を決めた理由は、

✅体調を考えながら「この科目はあと何時間欠席できる」「今日は何時間目まで出席して帰ろう」と教科ごとに単位を気にしながら通うのが辛くなった。
✅今後の体調の変化に対応できるように、福祉の力を借りる手段を知っておきたい。
✅自分の障害も生きるための資源と捉え、うまく利用して生活した方が物事がスムーズに進むのではないか。

と感じるようになったからです。

大人になってからよく考えますが、特別支援教育を受けられるのは障害者の特権です。

「せっかくなら一度はしっかりとした特別支援教育を受けてみよう」と思えたことで知らない世界を知ることができ、そこで得た知識や経験が今は大活躍しています。
私にとっては良い選択でした。

それから、途中で進路を変えることは悪いことではないです。

転校の場合は少し勇気が要りますが、高校や大学受験をする時に、直近の学力に応じて志望校を変える方がいます。それと同じだと考えています。

その時の病気や障害・生活状況に合わせて環境を変えることは、心身の健康を保つためにとても大切です。

 

転校は、学校にも前例がなく、担任をはじめ関係する先生方には驚きと戸惑いから「転校先はどうするの?」「大学受験に向けて頑張ってきたのにもったいない」などの意見がありましたが、理由を丁寧に説明し、理解してもらえました。

また、母が深い理解を示してくれ、親の視点から学校に私の転校の必要性を説明してくれたことも大きな支えになりました。

 

転校先は、私の住む地域には大学受験に対応した肢体不自由教育を行っている学校は一つしかなく、他に選択の余地はありませんでした。

中学生の時に一度見学に行っており、受け入れる側も私のことはだいたい知ってくれていたので、スムーズに手続きが進みました。

ただ、

「授業カリキュラムが高校と特別支援学校は違うため、私だけ一つ下の学年と一緒に授業を受ける科目があります。」「転学なので、筆記と面接の試験を受けてもらいます。」

と説明をされました。

手続き書類が多かったり受け入れにはいくつか条件かありましたが、私にはプラスになることばかりだったので、転校してよかったです。

メリット
  • 体育の授業に参加できるようになった。障害者スポーツのルールで行えるので障害の程度に関係なく楽しく参加できる。運動は楽しいことだと初めて実感出来た
  • 障害に合わせて、リハビリしたり体力づくりをする時間「自立活動」という科目がある
  • 教室に自分のロッカーがあって使わない教科書を教室に置いて帰れる
  • 障害によってノートをとるのが大変な場合は、パソコンを使用できる
  • 支援が手厚く、進路相談に熱心にのってくれる
  • 冬は室温管理されていて常に暖かい
  • 遠方の人や自立訓練を希望する人は寮(寄宿舎)に入ることができる(学校によって設置していない学校もあります)
デメリット
  • 学校にもよりますが、大学の一般受験に対応していない。私が通っていた学校はAO入試のみ指導してくれました
  • 休み時間が短く一人でゆっくりする時間が少ない
  • 寮生活だったので制約が多く、高校のように自由が利かない
  • お風呂に毎日入ることは出来ない

【高校の保護者付き添い問題】普通高校と特別支援学校での違い

私が普通高校2年生で修学旅行に行った時の出来事

私は、高校2年生の時に修学旅行に行きました。

普通高校には、特別支援学級のように個別に対応してくれる教員は付きません。高校生になると、自主見学の範囲や時間、団体行動する時間も長くなるので、心身の負担が大きいように感じました。

私は医療的ケア児ではなかったこともあり、付き添い無しで行くことができましたが、医師に修学旅行参加の可否や緊急時の対応についての診断書を書いてもらい学校に提出するという手間がかかりました。

当時は、近くにかかりつけ医はいなかったので、半年に一度くらいしか行かない地方の療育センターへ診断書をもらうためだけに行きました。その上、当日は診断書を出さないという対応をされ、ただお金と時間が無駄になりました。

障害がなくても、喘息や心疾患の持病がある生徒もいる中で、私だけが厳重な対応を求められる。むしろ持病のある人の方がリスクあるはずなのになせ私だけ?という思いでした。

まだまだ障害などの多様性の理解が進んでいないことを実感しました。

 

旅行中は、1クラス40人が5クラス、さらに教員もいて結構な人数でした。

疲れてくると歩くのが遅くなるため、周りの迷惑にならないように自分からクラスの列を離れ、学年の最後尾について行動していました。

すると、同じクラスの男女数人が車椅子を押しながら最後尾まで走って来てくれて、「同じクラスなんだからせめてクラスの後ろに行こうよ」「私も歩くの疲れたから一緒に後ろからゆっくり行こうよ」と声をかけてくれました。

見学先でも、通常車椅子では超えられない段差を数人が車椅子を持ち上げて連れていってくれました。私がみんなと同じ行程を進めるように気遣ってくれたと思います。

「ひとりで行けないならみんなで行け(手伝え)ばいいでしょ!」とクラスの1人が言ってくれたのを今でも覚えています。

学校はリスクマネジメントの観点から最低限の対応として診断書をもらう必要があると判断しました。確かに必要な対応ですが、本当に必要なのは多くの人の理解だと感じました。

もし当時、私が医療的ケア児で一人でケアができない状況にあったとしても、なるべく支援者と離れて過ごせるようにクラスメイトが環境を整えてくれたと思います。

クラスの全員が私が障害者であることを知ってはいませんでしたが、普段から授業中の水分補給などの許可されていることを堂々としていたり、自分の出席番号の前後の人や仲良くさせてもらっている友達の関係者に自分の障害のことを話していました。

そのなかで、クラス全体になんとなく伝わっていったと思います。

日頃から良い関係を築いておくことでいざという時に助けてもらえるので、関係性の構築はとても大切です。

普通高校での付き添いに関して

医療的ケアがあると保護者の付き添いが必須がどうかはっきりしたことは言えませんが、普通高校の場合、自己管理できない場合は、おそらく保護者の付き添いが必要だと思います。

私の場合でさえ医師の診断書がないと行くことができなかったので、医療的ケアがあるともしかしたら行けない場合もあるかもしれません。

重度の肢体不自由の方で、医療的ケアはないけど介護できる人がいない。生徒に介護をさせられない。という理由からで保護者が付き添った例を聞いたことがあります。

入学した段階ですぐに学校と相談することをおすすめします。

特別支援学校高等部での付き添いに関して

学校に配置されている看護師は、医療的ケア児のために配置されているということではないため、学校に配置されている看護師は付き添いできません。

そのため、保護者かその生徒のケアができる別の誰かが付き添うことになります。付き添いする人が決まったら学校からその方へ依頼します。

学校の判断にもよるので遅くとも予定している一年前から準備されることをおすすめします。

医療的ケアがあっても入学や入寮はできる?

私が通っていた学校にも医療的ケアがある人はいましたが、障害が軽度で自己管理できる人しかいませんでした。なので、問題なく入学・入寮できていました。

看護師がいましたが、医療的ケア児のために配置されていたというよりは、全員の健康管理や指導のために配置されていました。

私が卒業して数年後に、呼吸器を使っている人が入学したという話を聞きましたが、保護者の付き添い状況は不明です。

障害が重く医療的ケアはあるが学力には問題がないという人のニーズが増えたため、受け入れるようになったのだと思います。

医療的ケアがあり入学や入寮を考えている方は、早い段階で教育相談に行き準備することをおすすめします。

特別支援学校の高等部には併置と単置の学校がある

併置とは、同じ敷地内に2つ以上の学校があることです。

小学部や中学部に併設されている高等部や、複数の障害種別知的障害と肢体不自由などの教育を行っている学校などがあり、一部施設を共有しています。

比較的障害が重度の方が通う場合が多く、校舎は別でも廊下で繋がっていて、それまで関わっていた先生や友達が同じ建物の中にいることでそれほどストレスなく過ごせるのがメリットです。

 

単置とは、高等部のみ単独配置している学校のことで、扱う障害種別も一つだけです。

比較的障害が軽度の方が通う場合が多く、学科も複数あり、より高度な職業訓練を受けられるのがメリットです。私は、肢体不自由教育を行う高等部単置校に在籍していました。

【高校卒業後】進路の選択肢について

最後に、高校卒業後の進路についてです。進路にはいくつかあり、在宅、施設入所、就職、進学を選択できます。

病気や障害、医療的ケアがあっても考え方や工夫次第でどれでも選択できると私は思います。それぞれの選択理由の例を参考までにお伝えします。

在宅

在宅を選択する理由に、勉強が嫌いだったり、人と関わるのが苦手、長期間寮生活をしていて家にいることができなかったから卒業後はゆっくり過ごしたい…などがあります。

確かに団体行動をしていると、規則や時間に縛られて自分のペースで過ごせないと感じることがあります。周りを気にせず自分のペースで生活できるのは、在宅の良い部分と思います。

また、18歳からは制度上小児から成人へ変わるものが多いため、訪問診療や訪問看護等を利用しやすくなる地域が多いです。

そのため、今までは家族と離れて施設や病院から学校へ通っていた方も、高校卒業後は在宅へ切り替える方もいます。

施設入所

在宅の理由とは逆に、介護が大変と感じる家族や家族に苦労をかけたくないという思いから、高校までは家で頑張るけど卒業後は施設へ。と考える方も多いです。

マイナスな意見に聞こえるかもしれませんが、それぞれの考え方があっていいと思うので、本人や家族が納得できればそれは立派な選択だと思います。

医療的ケアのある重度の障害者を受け入れている施設がまだまだ少ないので、卒業してすぐに入所できるとは限らず、数年も入所待機する場合があります。早めに施設を見学したり準備されることをおすすめします。

就職

学校から勧められたり、病気や障害はあっても自分の得意なことを活かして社会的自立をすることなどを目的に選択します。

私は学校の勧めで、進学から就職へ進路変更し7年間働くことができました。

重度の障害や医療的ケアがあっても、職場の理解で基本在宅ワークができたり、企業への就職が難しい場合は、自分で働きやすいよう起業する方もいます。

主な就職先として、

  • 行政機関(障害者雇用枠採用を利用する場合が多い)
  • 一般企業
  • 特例子会社(一般企業の中でも雇用にあたって病気や障害に特別に配慮された 企業)
  • 障害者就労支援施設
  • 自営業(家業の手伝いや企業の設立・運営など)

があります。

進学

資格取得を目指している場合や、就職したいけど、自分の得意不得意がわからないため訓練したいなどの理由で進学もあります。主な進学先は、

  • 大学
  • 専門学校
  • 職業訓練校

です。

私は現在、通信制の大学に在籍しています。
入学当時は、仕事をしていたため働きながら学べることと、体調に合わせて自分のペースで勉強できるため通信制を選びました。

学校の理解や学生ボランティアの支援等もあり、通学制を選ぶこともできます。

ただ大学でも、障害や医療的ケアがあると行事参加の際に付添が必須になる場合があるようです。まだまだ付添については課題がたくさんあります。

特別支援学校を卒業しても高校卒業資格は得られないが、大学入学の資格は得られる

特別支援学校は、それぞれの能力や特性に合わせた授業を行うため、高校とは学習内容やカリキュラムが違います。

そのため「特別支援学校高等部卒業」となります。

一般的な高校卒業資格はもらえませんが、大学受験(入学)資格はもらうことができます。それは、大学(短期大学を含む)の入学条件が、

  1. 高等学校又は中等教育学校を卒業した者(法第90条第1項)
  2. 特別支援学校の高等部又は高等専門学校の3年次を修了した者(法第90条第1項)(文部科学省ホームページ引用)

となっているからです。

私は、高校から特別支援学校へ転校を考える時に、このことを知っていたため抵抗なく転校を決断することができ、選択の幅が広がりました。

現在特別支援学校高等部在籍の方は特に参考にしていただければと思います。

終わりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。

私が高校を卒業してからずいぶん経っているため、現在はもう少し病気や障害・医療的ケア児に関する一般的な理解が進み、学校も受け入れてもらいやすくなっていると思います。

それでもまだ、変わらず残っている課題もあるため、将来を考えるにあたり悩みを感じた時に何かの参考になれば嬉しいです。

本記事は、一個人の見解を含んでいます。全ての脳性麻痺がある方、またその他の病気・障がい・医療的ケアがある方が、この記事の限りではないことをご了承下さい。
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