【ロングインタビュー】こども介護服「ぷるちーの」14年の軌跡「息子の命を助けていただいた恩返し」

2021年9月1日で15周年を迎えた、こども介護服業界の先駆者でもあるぷるちーのさん。その商品数はなんと2,000点にも上ります。いったいどうやってたくさんの商品を作り続け、こんなにも長く愛される会社になったのでしょうか?

そこには、数多くの苦労や困難がありました。ぷるちーのさんの14年の軌跡に迫ります。

ぷるちーの代表の伊藤さんと息子のゆうすけくん

ぷるちーのはイタリア語で「ひよこ」のことです。かわいい響きの言葉を探していた時に友人から教えてもらいました。当時息子がまだ1歳で小さかったので「ひよこ」という言葉がぴったりだなと思ってつけました。商標登録名は「ぷるちーのみお」としています。オー・ソレ・ミオのミオからとって「愛する、わたしのかわいい赤ちゃん」という意味です。

子どもの介護服にぴったりの由来ですね。ぷるちーのみお、かわいい響きでつい口にだしたくなります。

ぷるちーの誕生秘話!前開きのかわいい服を着た息子の姿に感動

ーーーぷるちーのさんはこどもの介護服業界でも歴史のあるブランドですよね。

ありがとうございます。9月1日で15周年を迎えました。息子が1歳のときに急性脳症になり、そこからネットショップがはじまりました。今や息子も16歳です。

息子が急性脳症になり入院したときに、それまで使っていたスタイが気管切開カニューレにひっかかるので困っていました。そのときに友人が、気管切開用のスタイを作ってくれたことがぷるちーののはじまりです。

最初に作ったスタイ

その後、退院するときに「入院中は前開きの服が借りられたけど、家に帰るときに着る服がない!」と気づきました。

息子は少しぽっちゃりで、赤ちゃん用の前開き服はもう着られないし、かぶるタイプの服やズボンだと体が硬くて通らないし。

そこで、スタイと同様に、友人に前開きの服を作ってもらいました。

できた服を息子に着せたときに「着られて嬉しい!」「かわいくておしゃれ!」とすごく感動しました。他の人にも同じ経験をしてもらいたいと思って販売をすることになりました。

退院時に着ていた前開きの服
Tシャツは肩から裾にかけて全開するので脱ぎ着しやすくなっています。
ズボンは股下が全部開くのでオムツ替えが簡単にできます。

商品点数は2,000点以上!「何でもあるよ」がモットーに

ーーー2,000点以上の商品があるぷるちーのさん。どうやってそんなにたくさんの商品が生まれたのですか?

はじめは、お客様がどんなものを必要としていただけるかわからなかったので、お客様の「こんなの作ってください」というお問い合わせにできるだけ対応していきました。

そこから、前開きの服の開き方を右にするか真ん中にするかだったり、色ちがいだったり…その子その子にあわせて機能を足すごとに、点数が増えていきました。

木村拓哉さん主演のドラマ『HERO』に、どんな注文でも「あるよ」と言うバーの店主が出てくるんです。バーなのに、「納豆付き鮭定食ある?」と聞かれて「あるよ」と。

そんな「何でもあるよ」というお店を目指しています(笑)

わたし自身、ぷるちーのの介護服を着せたときにすごく嬉しくて、可愛いから頑張ろう!と思えたので、お客様にも「何でもあるよ」といいたいんです。

 

ーーーステキですね!「何でもあるよ」のぷるちーのさんの商品の中で今までで一番売れたものと、最近の売れ筋商品は何ですか?

今まで売れたのは、ロンパースと防寒ブーツですね。(画像をクリックすると商品一覧ページに飛ぶことができます!)

柄とサイズが豊富!ロンパース

装具の上から履ける防寒ブーツ

学用品のスモックと食事用エプロンもたくさんの方に買って頂きました。

スモック 1:かぶり、2:前開き、3:後ろ開き

スタイより大きい食事用エプロン

さらに最近は、車イスのレインカバーや車イスにかけるバッグが人気です!

車イスごとすっぽり!レインカバー

車イスにかけるバッグ

あとはオーダーメイドのつなぎです。オーダーメイドつなぎはリピートされる方が多くて、1人3~5枚注文される方も増えています。

ーーー体が大きくなるたびに毎年サイズが変わっていきますもんね。

サイズや前使っていただいたものの感想、生地、色の好みを1人ずつ聞きながら作っています。

スカート付きでのつなぎ
足先まで全開します。

後ろのスカートをなしで作ることも可能。寝ているときに後ろがもたつきません。

楽天への出店が契機に!ぷるちーのが大きくなった理由

ーーーぷるちーのさんは何人くらいの方が働いているんですか?

洋服を作っている人、雑貨を作っている人、ネット運営している人の3人と、受注や発送を行っているわたしの計4人です。外注もしていますが、基本はこの4人でずっと一緒にやっています。

ーーー思ったより少ない人数でビックリですし、ずっと同じメンバーなのもすごいですね。

わたしの無茶ぶりについてきてくれるメンバーのおかげです(笑)

1年目はとにかく商品を作って、2年目は作った商品を必死に売って、3年目は売り切れても在庫を抱えてもいけないと思って受注生産をはじめて…といろいろ試行錯誤しました。

ーーー大手ECサイトの楽天にも出店されていますよね。楽天に出店している子ども介護服のお店ってあまりないと思います。出店のきっかけはあったんですか?

前々から楽天さんには出店の声をかけていただいていたのですが、初めは自分のサイトを運営するだけでも手一杯だったので、お断りしていたんです。

ですが、楽天さんの扱うジャンルに介護商品が少ないというお話を聞き、それをきっかけに出店を決めました。

ーーー楽天に出店して変わりましたか?

アクセスが増えていろいろな人の目に届くようになりました。「こんな商品が欲しかったんです!」と言われることも増えて嬉しく思っています。

ぷるちーの楽天市場店

もう続けられないかも…?から一転!ぷるちーの法人化へ

ーーー14年のなかでつらかったことはどんなことですか?

息子が10歳の時に、急に食べられなくなって3ヶ月くらい入院したんです。ちょうどその時、一緒に服を作っていた友人も子育てで忙しくて、オーダーメイドの依頼もたくさんあって…2人じゃ手一杯で、ぷるちーのを続けられなくなりそうになったことがあります。

ですが、入院したことによって介護服の必要性を改めて実感しました。

このままじゃいけない、1から本腰をいれてやりたいと思い、次の年に法人化しました。それまでパートで働いてもいたのですが、それをやめてぷるちーのに集中するようになりました。

ーーー法人化して変わりましたか?

個人でやっていた時より、お客様やお取引先の信頼性が格段に上がりました。楽天市場は法人化していたからお声かけいただけたかなと思います。

反対に思った通りにならないこともありました。会社になれば布の仕入れなどがスムーズになるかなと思ったんですが、立ち上げたばかりで信用も実績もなくて、布の値段が高く設定されたりして力不足を感じましたね。たくさん仕入れれば安くなるのですが、大手のように大量に作ってどんどん売るわけでもないですし、季節ごとに柄も変えたい、となってくると…

法人化すれば全部が上手くいくというわけではなく、実績が必要となる厳しい世界だなとも感じましたね。

ーーー布の仕入れにそんな苦労があったんですね。

今は楽天さんという窓口がありますが、昔はたくさん作っても在庫をかかえてしまうので悩みましたね。

仕入れと在庫管理は難しくて、でも商品をお客様に届けたいという思いがあったので、5期目までは無給で働いていました。今も売れたお金で布を買うといった自転車操業ですが、もうけ云々より困っている人の助けになりたいので続けられています。

ぷるちーのを続けらるのは、息子の命を助けていただいた恩返し

ーーー14年も続けられたモチベーションは何ですか?

最初にスタイと前開きの服を作ってもらって、とっても嬉しかったことがモチベーションとしてずっとあります。

訪問看護や月に1回の受診のときにぷるちーのの服を着ておしゃれをすると、「かわいい!」と言われて前向きな気持ちになります。

おそろいの防寒グッズでおしゃれなゆうすけくん

商品がお客様に届いて「ありがとうございます」という言葉をいただけると、ぷるちーのが自分の居場所で生きがいだなと感じます。

息子が病気になってはじめは不幸だなと思いましたが、今はこの子あってのぷるちーので、こうやって困っている人を助けることができるのはありがたいことだなと思っています。

ーーーゆうすけくんあってのぷるちーのですね。

息子の命を助けていただいたことへの感謝と恩返しの気持ちもモチベーションのひとつですね。この子がいるということがとても愛らしいです。

まさに「ぷるちーのみお」ですね!

14年前と今で変わった介護業界

ーーー14年前と今で、介護服業界で変わったことはありますか?

今はこども用の介護服を作る人が会社や個人でも増えていますよね。昔はインターネットも今ほど発展してなくて、検索してもヒットしませんでした。だから、ないなら作ればいい!と思ってはじめました。

もし検索でこども用の介護服を見つけていたら、ぷるちーのをはじめていなかったと思います。

ーーーこどもの介護業界の中で変わったことはありますか?

昔は就学前に通う施設もなくていきなり入学でしたが、今は療育学級があったり放課後デイサービスが増えたり卒業後に入る事業所の数が増えたりと、変わっていることを感じています。

保健所に聞いても情報があまり得られなかったのが、ひとりひとりに支援員さんがついてネットで簡単に調べられるようになったので、退院後いきなり社会に放り出されるようなことも少なくなったと思います。

これからも便利でありがたい支援が充実することを期待しています。

ぷるちーののこれから

ーーーぷるちーのさんがこれから挑戦していきたいことはありますか?

もっと気軽に買えるように、定期的に商品が届くサービスなどもいいかななんて考えています。

ーーー面白そうですね!

介護を頑張っている方の生活をラクにできれば何でもやりたいです。

わたし自身、介護服は特別なものではなく子育てのひとつだと考えています。よだれが多い赤ちゃんにはスタイをつける、冷え性の人は温かい服を着る、汗かきの人は速乾性の肌着を着る、のような感覚で広まるといいなと思っています。

 

ーーーステキなお話をありがとうございました!

ぷるちーのについて

代表責任者: 伊藤 佳苗

ホームページ:http://kodomo-kaigofuku.net/

ぷるちーの楽天市場店:https://www.rakuten.co.jp/pulcinokids/

インスタグラム:https://instagram.com/pulcinokids.kodomo.kaigofuku

Facebook:https://www.facebook.com/kodomo.kaigofuku.pulcino/

Twitter:https://twitter.com/pulcinokids

メールアドレス:mail@pulcinokids.com

電話:090-6462-2899

編集後記

インタビューを通じて、伊藤さんのぷるちーのと息子さんへの愛情がひしひしと伝わりました。

「何でもあるよ」をモットーに15年間続けているからこそ、こどもの介護用品を探している人にとって心強い存在になっているんですね。

介護服をもっと身近に、介護を頑張っている人をラクにしたい、というぷるちーのさんのこれからの活動が楽しみです!

ライター紹介

山本みどり

2014年看護師、保健師免許取得。2019年よりライター活動開始。
大学病院小児科、保育園、小児訪問看護ステーションでの勤務経験あり。
 
「その子らしい成長・発達をサポートする」をモットーに、日々看護師として働きながら執筆活動を行っています。

自サイト「Kids care(キッズケア)」にて、子どものケアについて発信中。

 

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