選択肢が少ないからと、選ぶことを諦めてきた──。 そんな「声なき声」を「仕方ない」で終わらせたくない。 社会と家族がもっと繋がり、さらに理解し合えることができれば、 医療的ケア児だけでなく、すべての子どもたちの選択肢が広がり、 それぞれが自分らしく未来を描けるはず!!
『Wayプラスプロジェクト』は、社会と当事者家族が互いに一歩踏み出す勇気と、理解し合える場を作ることで、社会と家族を繋ぐ架け橋となり、 すべての子どもたちが、可能性を諦めずに挑戦できるプロジェクトです。
医療的ケア児ご家族と社会の架け橋となり、互いの声を届ける活動報告です。
今回はアンリーシュフレンズのひなくんママである由香さんが『日本医療的ケア看護職員支援協会第2回全国大会』で、放課後等デイサービスで看護師として働く立場での講演をしました。
テーマは『医療的ケア「児」から「者」への支援の拡大に向けた展望』
まさにアンリーシュフレンズのひなくんもその時期を迎え、由香さんもとても学びになったそうです。今回は由香さんにその時の話をお伺いしました。

左写真:右から下川先生・由香さん・菅原さん
目次
「児」から「者」へ…母の想い
2021年に『医療的ケア児支援法』は成立しましたが、「者」に関する法整備はその時点では曖昧だったそうです。
「幼少期からの医療的ケア継続者」と、「成人後の事故等によるケア必要者」をどう分けるかの実数把握が難しかったのがその要因です。
現在の支援法には「成人後も継続支援する」との一文はありますが、あくまで主眼は「児」にあります。現在、大人の特性に合わせた独自の法律が必要とされています。
生きるだけで精一杯だったあの日から、未来を描く今へ
ひなくんが小学校低学年の頃は先のことなど全く考えられず、今を楽しく生きれればいい……それだけを願っていました。
制度のことはなんとなく知ってはいたけれど、高校卒業が近づいてくるようになって、「生活介護」という実態を目の当たりにすることになりました。


もしかしたら働き方を変えなきゃいけないのかなと思っています。でも、それはそれで良いのかもと思っていました。
だけど、色んな方に話を聞くうちに「仕事を続けられるのかもしれない!!」という希望も出てきました。
今まで学校やデイサービスで手厚く見てもらっていた子どもの環境がガラリと変わるのはもちろんですが、今までのようにフルタイムワークをしながらスムーズな生活を送るには、新たな手配や調整が必要で、困惑している様子も見られました。
『医療的ケア児支援法』では「家族の就労を継続する」ということを謳っています。離職防止を防ぐという課題も含めたこの法律。「児」→「者」への法律もきちんと整えば、心配はなくなるのかもしれないと由香さんは現状打開への希望を願っていました。

方法は色々ありそうですが、これを組み合わせるのが難しそうですよね…
今までの社会参加で得られた感謝の想い
我が子に病気があるという事実に直面した時、色々な想いが交差しました。
保活時代「仕事を続けたい!」そんな想いに賛同してくれた団体は、ただただ人の役に立ちたいという想いで、ひなくんを引き受けてくれました。
生きているだけで精一杯で、成長や発達まで大きく望むことは考えてなかったけれど、学校やデイはひなくんを成長させようと可能性を広げてくれたそうです。

痰を出すために、ひなくん自身ができることは何だろう?と考えてくれたり、体のバランスを取るために、今では腕を伸ばすようになったんです!!
ひなくんは目が合うことも難しかったのですが、学校で視線入力に取り組んでくれたおかげで、今ではTVを楽しんだり、何より私が家に帰ったら『おかえり〜』というようにこちらを見てくれるようになりました!
そういうことに根気強く向き合ってくれたからこそ、息子の可能性が広がりました。そんなことが出来るなんて思ってもみなかったんです。
社会に出ていなかったら、ひなくんの成長はなかっただろうなと感じました。

親は毎日の生活を送るだけで日々が過ぎていたように思いますが、学校やデイは、その一歩先をいったアプローチをしてくれると感じることがあります。
この子達にも、他者と共存して生活している社会があるんだと私も感じています。
目の前に現れた「18歳の壁」の現実と、これからの願い
子どもが成長し「大人」の入り口に近づくにつれ、避けては通れない現実……それが「18歳の壁」です。
「手厚い支援」から、変わりゆくサポートのカタチ
学校や放課後等デイサービスでは、マンツーマンに近い手厚い看護・支援がありました。
しかし、18歳を境に移行する「生活介護」では、制度や人手が今とは全く異なるそうです。
施設見学を通して見えてきたことは、今までのようなマンツーマンの支援は難しいということ。この状況は決して珍しいことではないそうで「ただ順番を待つだけの時間」が増えてしまう現状があるようです。
ケアが続くというジレンマと親の健康
医療的ケアが必要な子どもたちは、体は大きくなってもケアの面ではずっと継続していきます。
・24時間 目が離せない緊張感
・「終わってほしくない」けれど「いつまで続くのか」という本音
これが家族の抱える最大のジレンマです。
さらに、親も歳を重ねます。「自分の健康がいつまで続くのか」「私が倒れたら、誰がこの子の意思を確認するのか」そんな不安がよぎると言います。


医療的ケア児が「大人」になるということ
由香さんは看護師という立場から、医療的ケア者に対するスタッフの課題について話してくれました。
高齢者介護とは根本的に異なる「専門性」
医療的ケア者に提供されるケアは、単なる「加齢に伴う介助」であってはなりません。
幼少期から医療的ケアとともに生きてきた人たちには、一般的な成人病や高齢者医療の「スタンダード」では測れない、独自の専門性と背景があるからです。
かつて自立した生活を送り、成熟した身体が加齢によって衰えていく「高齢者」と、幼少期から成熟が未発達な状態で大人になってきた「医療的ケア者」とでは、身体のメカニズムが根本から異なります。
例えば肺の膨らみ、腸の動き、臓器の配置一つとっても、成長の過程で医療的ケアとともに生きてきた個々の「形」があります。
また「生活の質(QOL)」や「尊厳」を守ることは高齢者医療と同じですが、小児期からの医療的ケア者は、加齢に伴う二次障害のリスクを「予防したい」・ゆっくりな発達であるため「さらに発達・成長していきたい」という前向きなニーズを持っています。
「なぜ今、このケアなのか」という理由を理解
小児期からの障がいを持つ人と関わってきた医療従事者の数は少なく、成人期の病気だけを診てきた人にとって、小児期からの障がいを把握することは容易ではありません。
・なぜ胃ろうなのか
・なぜ呼吸器が必要なのか
・なぜ身体に変形が起きているのか
それらはすべて、過去の生活、これまでの病歴、そして命を繋いできた試行錯誤の積み重ねの結果です。過去にどのような生活を送り、どのような危機を乗り越えて「今」があるのか。その過程を紐解かなければ、正しい個別ケアには辿り着けません。
「スタンダード」と「個別性の正解」のギャップ
医療従事者であっても、小児期からの障がいを持つ人の理解を深めていくことは、実はとても難しいことです。
医療上の「スタンダード(標準値)」に当てはめようとすることに対し、医療的ケア児・者は「標準値には当てはまらないが、その子にとっての安定(正解)」を長年積み上げてきています。
また、在宅診療の現場では医師と家族の間で、ケアのあり方を巡る摩擦が起きることがあるようです。
医師や看護師から「それはお母さんの思い込みでは?」と言われるケアも、実は「スタンダードなケアでは対応できなかったから、今の形に辿り着いた」という、命を守るための最適解であることが多いのも現実です。
求められるのは「伴走者」
医療的ケア者の支援には、単なる医療知識だけではなく、その人の人生の「歴史」と共に学ぶ姿勢が不可欠です。求められるのは「伴走者」としての理解なのではないでしょうか。

現在、移行期医療について各所で話題になることも多く、親は18歳を超えたあと、医療をどのように継続していけるのかと困惑しています。
「小児期から診てくれている小児科でずっと診てもらうことを望むことが、成人期を迎えた子どもにとっての医療として正しいのか悩みます。成人病などのリスクも考えると、これまでの未熟な発達のままの体を理解してくれている医療従事者に診てもらうことが安心ではあるが…。超高齢化社会の中で、入院した時に今までのように手厚く診てもらいたいというのも本音です。
そのお子さんに合った最善の医療を多職種で考えていけるような場所や、選択肢が拡がると良いと思います。
下記の図表を参考に、「2.のような「並診」という選択肢はとても希望なんですよね」と、在宅医療・地域で生きる医療的ケア児・者の課題を分かりやすく説明してくださいました。

まとめ

「大人になってもつまらない人生ではなく、色んな人に囲まれて、大好きな居場所がある、楽しい人生を歩んでほしい」と思っています。
そんな想いを由香さんはお話ししてくださいました。
医療的ケア児が大人になり、医療的ケア者と呼ばれるようになった時、スムーズな移行と途切れないサービスの充実を願っています。
由香さんは現在、TOKYO医療的ケア児ペアレントメンターとして、医療的ケア児・者を育てながら仕事をすることを発信しています。どのように働いているのか、どんな課題があるのか一緒に考えることで、もっとたくさんの選択肢が増えると思います。

アンリーシュ運営メンバーとして活動。
兄と妹、真ん中に13トリソミーの医療的ケア児あおいを育てる3児の母。
医療的ケア児を育てながらお仕事を。在宅でも出来る活動にチャレンジ中!!

