医ケア児家族の就労(外勤・在宅勤務)〜後編〜

この記事は、アンリーシュパートナーズ様(毎月定額寄付)の提供記事です。
益田大介 様 よりご支援をいただき、完成いたしました。
日頃より貴重なご支援を賜りまして、ありがとうございます。

2021年に制定されました「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)」の中に、『医療的ケア児の健やかな成長を図るととも に、その家族の離職の防止に資する』という目的も含まれているのはご存知でしょうか?

そうなんです、今、医療的ケア児家族の就労を国をあげて応援してくれているんです。
しかし、まだまだこの法案に社会が追いついていないことは確かです。

アンリーシュの理念でもあります『共に自分らしく生きられる社会』が
実現するよう、私たちも努力をしていきたいと思っています。

後半編では、純子さんが「働くこと」についてお話ししてくださいました。
医療的ケア児家族だけではなく、誰にでも通ずるお話だと思います。
ぜひご覧ください。

 

働くこと

働く上での周りの支え

純子さんは、生まれてくる子どもに医療的ケアが必要なことを上司には話していたけど、
周りにはほとんど話せていなかったと言います。

純子さん
周りに子どもが「障がい児」だと言えなかったんです。育休中は孤独に過ごしていて、友人に聞かれてもごまかしていました。
仕事はなんだかんだでスムーズに復帰したのですが、やはり休まないといけないことも多く、
上司が周りに迷惑がかからないようにフォローをしてくれていて、本当にありがたかったです。
Tomoko
ただでさえ子どもの病気に気持ちが追いつかないのに、それを周りに話すことも難しいですよね…
でも上司の方の理解があったというのは、とても救いでしたね。
純子さん
上司は応援してくれていました。そのような職場環境に感謝の気持ちがあります。
そして子どもも大きくなって、2人目も生まれて、そこから気持ちもオープンになっていきました。
最近では『私、医ケア児の親です!』って言って、社内の講演会に出たこともあります(笑)周りもビックリですよね!
Tomoko
医療的ケア児の母である事を存分に発揮できる場があったんですね!とても素敵です。

昭和大学薬学部での講義

現在、純子さんは大学の講義に参加したり、さまざまな場所で講演することも増えているそうです。
「医療的ケア児の現状を知ってもらいたい!」そしてそれを「現場で活かしてほしい!」
まさに当事者・当事者家族と、専門家をつなぐ架け橋になっておられます。

【13種類の薬を飲ませる】プレッシャーや災害時の対応など…医療的ケア児家族の悩み

「働くこと」への想い

仕事と両立するうえで、就学問題での「学校への付き添い」は大きな壁になると思います。

ななみちゃんが小学校入学の時に、東京都では付き添い期間を短くする取り組みや、
医療的ケア児支援法の動きが活発化し、希望が見えていた時期でもあったそうです。

しかし状況があまり変わりそうになかったため、純子さんも悩んだそうです。

純子さん
入学に伴って付き添いがあるから仕事を辞めなければいけない、その時に仕事について考えました。だけどやっぱり辞めたくなかったんです。
仕事をしてる事が好きだったし、誰かの役に立ててるのが嬉しかった。もちろん子どもに付き添って学校へ行くことも、大事な役割だとは感じていました。
だけど、それだけになってしまう辛さを感じてしまう自分も居ました。
Tomoko
ななみちゃんの小学校入学時に「仕事」に対して向き合ったんですね。そこでご自分の想いが明確化された事はとても良いことですよね。
結果、付き添いはどうなりましたか?
純子さん
教室の後ろの方で仕事をさせてもらってました。在宅勤務も可能な会社なので、そのへんは臨機応変に対応してくれて。
今では学校に仕事スペースのボックスがあるんですよ。
Tomoko
え〜!!すごいですね!「付き添いをすること」「仕事を続けられる環境を作ること」両方を学校が真剣に取り組んでくれているのが嬉しいですね。「学校に来てください!」と一方的にお願いするのではなく、一緒に医療的ケア児の就学を考えてくれているようでとても嬉しいです。
全国にも広がっていってほしいですね。

仕事をするにあたって心がけている事

働くうえで、「こんな準備をしておくといいよ」というアドバイスをお聞きしました。

「自分1人だけで全部やろうと思わなくていいよ」という事。

純子さん
完璧に準備して、仕事も育児も完璧にやろうとしても絶対にパンクしちゃんですよね。だから職場のメンバーにはいつもこの言葉を伝えています。
やりきれない時って絶対にあるんです。だから、家事だったら家族、時には家事代行のようなサービス、医ケア児のことだったら看護師さんやヘルパーさん、親戚や友達へ助けを求めることも大切だと思います。
それと同じように、仕事も全部自分でやろうとすると難しいので、出来ない時は「諦めるのではなく、誰かに渡す事も大事」だと思っています。

たくさんの支えを作っておくことが、とても大事だということを教えていただきました。
私たちは一人で生きている訳ではないので、人の手を借りて生活することが
社会で生きていくということなんだなと思いました。

働きやすい職場づくり

Tomoko
「渡す」という発想良いですね!ただどうしても、自分の仕事を人にお願いしようとすると、後ろめたい想いが拭いきれないと思うのですが…
純子さん
周りが声をかけるというのはとても重要だと思います。仕事は全部を1人で背負わないことも大事だし、楽になる方法の一つでもあります。
誰かが誰かをフォローできる環境づくりはとても大事です。それを作るには、渡す側ではなく、渡される側が声をかけると良いと思っています。
なかなか自分から「無理なのでお願いします」とは言いづらいですよね。だから気づいたら引き取ってあげるよう心がけています。
Tomoko
確かに、声をかけてもらえると、心が軽くなる想いがします。日頃から気づく努力も必要ですね。
純子さん
私も管理職の立場になって、だいぶ神経が図太くなりました。自分からSOSを出せるようになって、それを常日頃、出すようにもしています。そうすることで周りの人たちも助けを求めやすくなってくると思います。
今は、共働きが当たり前になってきているし、子どもが居たら休まざるを得ない状況もあります。
お互い持ちつ持たれつの関係を築くようにして、いつでも助け合えるようにしています。

 

今後の想い

今後、期待したい未来についてお聞きしました。

介護は誰にでもやってくるし、子育てを経験されている方も多い。
誰かのために時間を作らなければならない時期が必ずあります。しかもそれが、何個も重なることだってあると思います。
育児と介護を同時にやっていたり、受験生を抱える親御さんも子どもを放っておくことはできませんよね。
どのステージでも、私たちは一人でやりきる事は出来ないと思います。

そんな状況を「皆んなで補える社会」になると良いなと思います。
家族との生活が当たり前にあることを理解できる社会の仕組みが、どんどん作られることを願っています。

 

ペアレントメンターのお知らせ

現在、アンリーシュでは令和5年度東京都より委託を受けまして
『東京都医療的ケア児ペアレントメンター』の事業を行わせていただいております。

同じ医療的ケア児に関わってきたママさん達が、
就労に関して一緒に悩み、共に気持ちを分かち合えるようお話をさせていただいています。
純子さんもそんなメンターの一人です。

解決はできないのかも知れない…
だけど誰かに話す事で気持ちが元気になって
前向きになれるのなら、
本当に力強いものが生まれると、私たちは信じています!!

『制度がない!仕事がない!』と落ち込んでいてはもったいないです。
医療的ケア児家族一致団結して、社会に乗り込んでいきましょう。

相談窓口は「東京都医療的ケア児ペアレントメンター」です。
数多くのご家族とお話しできることを楽しみにしています。

 

 

「過去の自分へのプレゼント」インスタライブで語ったセミナーに対する想い

 

まとめ

私は、リアルに働くことは難しいと諦めていた立場でした。
しかし、純子さんは周りの理解や自らの行動力で、
仕事を続けることを実現されたお一人でもあります。

その経験を活かし、今では下の世代に無理のない働き方を提案し、心がけておられ、
とても頼もしい存在だなと思いました。

社会で生活するには、一人で生きていくことは難しいと思います。
家族が居て、何かしらの助けが必要だったり
自分の体でさえ、病気をすれば仕事をすることが出来なくなります。

一人で何かをやり遂げようとするのは、とても難しい事です。
医療的ケア児家族が抱える問題は、形が違えども誰にでも起こりうる状況です。
こうゆう事が理解され、それを容認できる社会が作られる事を願っています。


tomoko
ライター:tomoko
アンリーシュ運営メンバーとして活動。
兄と妹、真ん中に13トリソミーの医療的ケア児、葵結(あおい)を育てる3児の母。
医療的ケア児を育てながらお仕事を。在宅で出来る活動にチャレンジ中!!

医ケア家族を寄付で応援する!【サポーターズ体験記】


この記事が参考になったら、以下のボタンよりシェアをお願いします