こんにちは!アンリーシュライターなおこです。
7/23に、アンリーシュ初の主催イベント、「医療的ケア児と社会課題を考えてみようVOL.1」が開催されました!こちらは、そのイベントレポートの後半になります。
イベントは、途中休憩5分を挟み、全部でおよそ2時間。前半はアンリーシュ半年間の活動報告と、医療的ケア児とその家族を取り巻く社会課題の提起でした。
後半は、いよいよ、参加者全員による、課題の解決策を導き出すためのグループワークです!
それでは、以下レポートになりますので、皆さんも一緒に課題解決に向けてお考え下さい。
目次
5つめの社会課題
まずは、社会課題のおさらいです。
アンリーシュ代表金澤が、自身の体験をもとに提起した課題は4つ。
- 情報不足
- 就園・就学時に、学校に受け入れてもらえない
- 就学できたとしても、付き添いをしなければならない
- 経済的不安
そして、実はさらにここに、もう一つ無視できない、大きな課題があることが金澤から伝えられました。
それは、患者家族の「孤独」です。
現代の社会において、社会的つながりがなく、孤立し、孤独であることは非常に辛い事です。患者家族がどうして孤独に陥ってしまうのか、そしてどうしたらそれを解決できるのか、金澤自身の体験が語られました。
金澤家ヒストリー~入院から転院まで
金澤の娘さん「なおちゃん」は、出生時は何の問題もなく、通常のお子さんと同じように生まれました。
しかしミルクを全然飲むことができず、1か月経っても体重が全く増えなかった事により、検査入院が決定。初めは2週間程度の予定が、検査を繰り返すことになり、入院期間は3年にも及びました。
この間、金澤はネットで同じような症状の子がいないかなどを散々検索しましたが、情報は全くありませんでした。
さらに、ずっと付き添い入院をすることを余儀なくされ、子供の側を離れることができる時間は最大で20分。ほとんど外出することもできず、社会からの孤立を感じたと言います。
てんかんの発作をきっかけに、あるブログを発見
ある時、金澤は、なおちゃんのてんかん発作をきっかけに、ひとつのブログを発見します。
それは、同じように、自身のお子さんがてんかん治療をしているママが書いているブログでした。
自分の娘と同じ病気の治療をしているお子さんがいる。その事に非常に勇気付けられ、泣きながらブログを読んだと言います。
自身もブログ開設〜孤独から発信へ
その後、金澤自身もブログを開設。付き添い入院をする病室から発信する事で、多くの人と交流、社会とのつながりが生まれました。中には、飛行機に乗って会いに来て下さった読者もいたそうです。
しかし、全ての人がこうして自分から発信できる訳ではありません。
患者家族の孤独は、今後も大きな問題であり、先出の4つの社会課題にこちらの「どうして孤独に陥ってしまうのか?どうしたら解決できるのか?」を加え、解決に向けてディスカッションを行うことになりました。
ワーク①アイデアの書き出しと仕分け
ワークは、参加者全員を2つのチームに分けて行われました。
まずは、課題解決に向けて、アイデアの書き出しから始めます。大きめの付箋紙に、各自思い付いた事をどんどん書きます。
- 何が問題なのか?
- それを解決するためにはどうしたらいいか?
の2点を重点的に、とにかく量を出します。その後、チーム全員で付箋紙を仕分けし、大きな模造紙に貼り付けて行きます。
仕分けと貼り付けが終わったら、チーム内で発表に向けて話し合います。ほとんどの参加者の方が初対面だったと思うのですが、みなさんとてもスムーズにワークをこなされていました。
参加者の方々の、「医療的ケア児とその家族を取り巻く社会課題を解決したい」という強い想いを感じました!
ワーク②チーム内ディスカッション
続いて、発表に向け、各チームごとに話し合います。私がいたチームには支援者の立場の方が多く、どちらかと言うと支援者の目線でのアイデアが多く出ていた印象です。
当日出ていた問題やアイデアを、以下に、箇条書きで羅列します。
- どういう制度やサポートが利用できるのか、その情報が一元化されていない。現状は仲間内で口コミ的に教え合っている。
- 就学時にどうなるのか、もし自分が死んだらこの子はどうなるのかといった将来の不安が大きい
- 病児と障害児、医ケア児では使える保育システムが違う
- 医ケアがあるだけで預けられる所が激減する
- 育児の悩みが違うため、家族間や、友人などとも話がかみ合わず孤立する
- ケアが母親中心になり、父親の参加がない(父親方の理解が少ない)
- 出生後退院した後、家庭で医療的ケアをする場合の情報がなさすぎる。
- 相談・支援員がいるが、彼らが何をしてくれるのか、それすらも家族はわからない。
これらのアイデアを、私たちのチームは、「制度」「環境」「親などの気持ち」の3カテゴリーに分けて考える事にしました。
こうして整理すると、課題などがとてもわかりやすくなります。付箋が多く貼られているカテゴリーは、多く関心が集まっているという事でもありますね。
ワーク③チームごとに発表、まずはチームその1
さて、いよいよ発表です!まずは最初のチームから。
最初のチームは、「孤立する医ケア家族を救え」と題して発表をしてくれました。
まずは課題です↓
- 入院中に全く情報がない
- 退院してからの制度も使えないものが多い
- 再入院もできず、家族の時間が取れない
切実な当事者の思いが伺えます。親が全てのケアを担当する事になれば、家族の時間はなくなり、親子共倒れになる危険もあります。
そして解決方法の提案は↓
- 障害者手帳のような、医療的ケア児手帳などがあればどうか
- 病院以外で、相談員がほしい
これに対しては、専用手帳は、多くの予算を必要とし、政治家としても難色を示すだろう。だったら、もう自分たちでカードなどを作ったらどうか。まずは「知ってもらう」事から始めよう、などの意見が出されました。
ワーク④チームごとに発表、チームその2
続いて私のいたチーム。
まずは課題からです↓
- 当事者は理解されずに孤立する、家族や友達の輪に入れない
- 退院し家庭でのケアに移行する段階になっても、病院側からも何も教えてもらえない
やはり「情報不足」が大きな問題です。解決方法としては↓
- 個人でブログやSNSで発信し、仲間を見つける
- 医ケアを担当できる人材の育成
- 在宅ワークの拡充や、障害児の家族を雇用してくれるような制度の新設
- 相談・支援員をもっと増やしてほしい
また、きょうだい児が生まれる時に、生まれる前から、支援制度などを教えてほしい、という意見もありました。
まとめ
議論は白熱し、最後には時間が足りなくなるほどでした。今回は当事者、支援者、政治家など、様々な立場の方に参加頂き、貴重な意見交換の場を提供できたと感じています。
私は医ケア児の当事者でも、支援者でもない立場なのですが、その私が今回参加してみて思ったのは、「情報不足」に関する課題がかなりあるように感じました。
病児でも障害児でもない医療的ケア児は、制度のはざまに落ちてしまい、利用できる支援制度が少ないのが現状です。
自治体によっても違うこの支援制度を、まずは何があるのか、どれだけ利用できるのか、それが今よりも明確になるだけでも、医療的ケア児と家族を取り巻く環境はかなり変わってくるのではないかと感じました。
さて、レポートはこれで終わりです。前半からかなり時間が経っての更新になってしまい、すみませんでした!
アンリーシュでは、また次回のイベントも企画していますので、お楽しみに。今回参加して頂いた方も、次こそはと思っている方も、ふるってご参加下さいませ。
最後までお読み頂きありがとうございました!