この記事は、アンリーシュパートナーズ様(毎月定額寄付)の提供記事です。
tomoriaku 様よりご支援をいただき、完成いたしました。
日頃より貴重なご支援を賜りまして、ありがとうございます。
皆さんは、レスパイト入院やショートステイ(短期入所)という制度を使ったことがありますか?
家族の休息や予定がある時に利用できる制度です。
ご家族が利用するにあたっては、さまざまな葛藤もあると思います。
今回は、レスパイト入院・ショートステイ(短期入所)の利用についてまとめていきます。
目次
レスパイト入院・ショートステイ(短期入所)
医療的ケアが必要な子どもや、障がいのある子どもを一時的に病院や施設などに預け、家族が休息(レスパイト)やリフレッシュを得るための制度です。
レスパイト入院
医療保険を使った制度で、医療機関で一時的に受け入れてくれる短期入院のことです。
医療的ケアが必要な子どもは、病院でみてもらえるので安心ですね。
体調が悪くなるとそのまま入院となることもあります。
ショートステイ(短期入所)
福祉制度を使ったサービスで、医療的ケアがなくても受け入れが可能な短期入所のこと。
施設によっては医療的ケア児も受け入れが可能です。
基本的には医療とは異なるので、発熱などの症状が見られると利用ができなくなることがあります。

料金の違い
医療と福祉なので、料金が異なります。
ショートステイ(短期入所)の場合、日数によっては「障害児福祉手当」などの資格が一時的に喪失することがあります。長期間利用する場合は、各市区町村に問い合わせてくださいね。
今回、アンリーシュフレンズのあおいちゃんが、治療目的で短期入所施設(福祉・付添い有り)を利用しました。いつも利用しているレスパイト入院(医療)と比較してみましょう。
地域によって制度の有無や呼び方などに違いがあります。
お住まいの地域の相談事業所などへお尋ねください。

生活で使う全てのものを準備する必要があります
家族の葛藤
子どもを人にお任せするということは、親として複雑な心境が伴うかもしれません。
しかし、親も不死身ではありません。親だけで子どもを見ることには限界があります。
医療的ケアが必要なため、家族意外の人にお願いしなければいけないこともあると思います。
罪悪感と自己犠牲
基本的には、子どもが成長すれば日常的なお世話は少なくなります。
オムツを変えたり、ごはんを食べさせたりというお世話は、だんだん無くなっていくのが子育てです。
しかし医療的ケアが必要だったり、重度の寝たきりの子どもだと、朝ご飯や日常のお世話は1日たりとも欠かすことができません。
医療的ケアを怠れば、命に関わってくる可能性もあります。
「疲れた、今日は何もしたくない」と思うことがあるかもしれません。

休みたい!という想いを抱える一方で、誰かにお願いすることに罪悪感を感じることもあると思います。日々のお世話は生活の一部。子育てをしている家族にとっては当たり前のこと。
「息抜きすることが悪いことのように感じる」と思うこともあるのでないでしょうか?
「自分が頑張れば、レスパイト入院させずに済むのではないか?」
「自分の子どもを預けるなんて親失格ではないか?」
そんな狭間で、ご家族は葛藤していると思います。
他人に預けることの不安
他人に預けることに不安はつきものです。
「病院のスタッフは、ちゃんとケアしてくれるだろうか?」
「子どもは、環境が変わって不安にならないだろうか?」
また、実際にレスパイト入院をしたら体調を崩したなどという経験がある方もいると思います。
そうなるとさらに利用の足が遠のいてしまうのも現実です。
子どもは環境の変化には敏感です。
急に慣れない環境におかれると体調を崩すこともあると思います。
何度か利用して慣らすというのも一つの方法ですが、親の心情としては、なかなか難しい部分もありますよね。
再スタートの不安
本当に数日間、レスパイトを利用しただけで休息がとれたと言えるのでしょうか?
あおいちゃんママはどう感じていたのでしょうか?

その反面、お世話をしない時間があるだけで、こんなにも自由な時間があるんだと気付かされました。暇を持て余しすぎて、何をしたらいいか分からないというのが最初の印象です。
これが医療的ケアがない家族の時間なんだなと感じ、改めて日頃している医療的ケアを認識し、自分の頑張りを褒めてあげたくなりました!
あおいが帰ってくると、不思議とやる気がおきました!
今までダラダラと続けていたお世話に一旦リセットがかかった感じで、とても身軽に再スタートが切れたんです。
こうやってたまにリセットすることは良いのかもしれないと感じました。
他人に見てもらうことの大切さ
「他人に見てもらう」ことは、親子にとって大きなメリットがあります。
親の負担を軽減
医療的ケア児の育児は、24時間ケアが求められることが多く、親の負担は非常に大きくなります。
睡眠不足や慢性的な疲労が続くと、親の体調が悪化し、子どもに十分なケアを提供できなくなる可能性もあります。
また、他人に預けることで少しでも心の余裕が生まれ、ストレスを減らすことができます。
体力的回復やメンタル面でも効果が期待できます。
子どもの社会性を育む
医療的ケア児も、できる限り多くの人と関わることは大切だと思います。
それに、いつまでも家族だけの生活が続くとは限りません。
家族以外の人に慣れることで、子ども自身が新しい刺激を受け、社会性が育まれます。
また子どもにとっても、親以外のケアを受ける経験は大切です。
色んな人からケアを受けることで、将来的に親が対応できない状況でも安心して過ごせるように練習しておくのも必要です。
周囲にとってのメリット
「親だけがケアできる状況」は、リスクでもあります。
親以外の人がケアをできる体制を作ることは、万が一の備えとして頼れる人を増やすことにもつながるのです。
また、家族以外の人がケアに関わることで、保育園・学校・施設などの受け入れ体制が広がり、社会全体の理解も深まります。
自分たちの殻に閉じこもるのではなく「助けて」を周りに言えるようになると、枠も広がっていきます。
親の学ぶ機会
他人にケアを任せることで、新たな気づきがあることもあります。
いつもと違う視点が入るということは、新しいケア方法や便利な道具についての情報が得られることがあります。時には間違った方法を正すことにも繋がります。
また、「こうしなければいけない」という親の固定観念が和らぎ、より柔軟にケアを考えられるようになり、家族の気持ちの面でも変化があるかもしれません。

レスパイト入院では全ての日常の生活を他人に見てもらえます。
「この注入のスケジュールだとお腹が休まらないんじゃない?」「こうしたらウンチの形状が変わってくると思うよ」といった
新たな視点の意見をいただきました。
また、「他の人はこうしてるよ!」という自分だけのやり方ではない方法を教えてもらうことがあるので、気づきの一つとしてとても良い機会だと思いました。

子どもの笑顔を守るためにも利用していきたい制度です
まとめ
医療的ケア児の育児は、親だけで抱え込むには限界があります。
「他人に見てもらう」ことは、親が休息を取るためだけでなく、 子どもの成長、家族の安心、社会全体の支援体制の向上 にもつながります。「預けること=悪いこと」と捉えるのではなく、親が健康でいるために子どもの安心につながる制度を適度に利用することも大切です。
ただ現実問題として、不安を抱えているご家族は多いと思います。家族の不安がつきまとうサービスの発展は今後の成長が見込めません。
どうしたら安心安全に子どもを預けられるのか、どのようなシステムが確立すれば預かる側も安心して預かれるのか、その議論がまだまだ必要だと思います。
レスパイト入院やショートステイ(短期入所)を安心して利用できる社会が整っていくことを願っています。

アンリーシュ運営メンバーとして活動。
兄と妹、真ん中に13トリソミーの医療的ケア児、葵結(あおい)を育てる3児の母。
医療的ケア児を育てながらお仕事を。在宅で出来る活動にチャレンジ中!!
きょうだい児は大きくなってくると、自分で勝手にご飯を食べたり、好きなことをして過ごしているので、だいぶ楽になったなと感じることがあります。
ただ、あおいの場合は「お腹が空いた」とか「オムツが気持ち悪い」とか言葉に出して言えないので放っておくことはできず、いつも葛藤しています。