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「もしものとき救急車を呼ぶには、どう伝えればいいんだろう?」
「こんな状態で呼んで、大したことなかったら怒られないかな……」
医療的ケア児を育てる親御さんなら、一度はそんな不安を胸に抱いたことがあるのではないでしょうか。普段から呼吸状態の観察や吸引、経管栄養など、医療的なケアを日常的に行っているからこそ、「どこからが緊急で、どう説明すべきか」のラインは非常に悩ましい問題です。
今回、医療的ケア児の救急要請に関する講義を受ける機会がありました。
講師は杏林大学看護学科の教員である 山内亮子先生。救命救急士の資格をもち、以前は救命救急学科の教員をされていました。
講義を通じて見えてきたのは、「医療的ケア児に一般論は通用しない。だからこそ『いつもの状態』と『今の違い』をどう伝えるかが命綱になる」ということ。
今回は、この講義で得た気づきをお届けします。
目次
救急要請時の電話でのハードル
体調不良の原因は探索済み
医療的ケア児の日常は、常に医療と隣り合わせです。子どもに異変が起きたとき、親御さんは最初からパニックで救急車を呼んでいるわけではありません。

確かに、まずは自分でも色々と確認して、訪問看護師さんや訪問医の先生に相談をして、電話をしているケースもあると思いました。『とりあえず、早くきてくれたら良いのになぁ〜』私も何度かそう思ったことがあります。
下記のような対応はすでに家族で行われているにも関わらず、同じようなことを救急隊員が到着後に行います。そこにご家族はもどかしさを感じてしまうようです。
しかしながら、救急隊員から病院への連絡は搬送のために必要なことで、救急隊員からみた観察も必要となります。また状態によっては、かかりつけ病院以外への搬送になることもあるので、このもどかしさは必然的なものとして、心に留めておく必要があると思いました。
救急車は、住所を聞いた段階では動けない
医療的ケア児であっても、症状の聞き取りを行なった上で出動指令が出ます。(*特例を除く)
ということは、電話口の限られた時間のなかで状態を的確に伝えられれば、おのずと救急車の出動も早くなります。
しかし、重度心身障害のあるお子さんの場合、普段から意思疎通の表現方法が独特で、言葉による会話が難しいことも少なくありません。親御さんにとっては、表情や微細なサインで『いつもと違う』と分かっていても、それを電話越しに、あるいは駆けつけた救急隊に説明するのは、至難の業です。


ここをどう答えるか、事前に考えておくことが良いのかなと思いました。
小さい頃は無呼吸発作が多く、医療的な対応をしながらの通報で、なかなかスムーズ伝わらないという問題を解決するために対応してくれました。
一度最寄りの消防署に問い合わせてみても良いかもですね。
救急隊に何を使えるべきなのか
医療的ケア児家族は、我が子の病状やケア方法を詳しく把握している「その子の専門家」でもあります。
そのため、緊急時に「主治医にだけ直接伝えられれば、それでいいのに……」と感じてしまうことも、親御さんなら共感できるのではないでしょうか。
しかし、病院への申し送りは必須。急変したときに、別の病院へ搬送せざるを得ないケースもあります。
ここで大切になるのが、「病名を伝えること」よりも「どのように改善すれば、いつもの状態に戻せるのかを伝えること」です。
たとえば、「〇〇という疾患です」と病名を伝えても、その子によって症状はさまざま。救急隊や搬送先の医師がその子の病名を把握したからといって、個人の「通常」を知りうる情報にはなりません。
病名も大切ですが、「この子にとっての平常時はどういう状態か」「どうなれば安心できるのか」という具体的なことを伝えることが、適切な処置への近道になります。

疾病名を言っても伝わらないことがある、それよりもどういう状態にもっていくのが適切なのか伝えるのが必要。と聞いた時に、とても腑に落ちました。

「呼んで大したことなかった」を気にする必要はない
研修会の中で、山内先生の声として印象的だったのが、次のような言葉です。
「子どもの場合は特に、親御さんが『一大事だ』と思って救急車を要請するのは、必然的なことです。
子育て経験もまだ浅い中、救急車を呼んだわりには、到着した時には状態が落ち着いてしまったということはよくあること。そんなことは気にする必要は全くありません」
この言葉に救われる親御さんは多いのではないでしょうか。私もそのうちの一人でした。
今まで救急車を呼ぶような事態に遭遇することはありませんでした。救急車を呼ぶなんて、一大事だ!!……確かに今の状態は一大事なのですが。
現場の救急隊は、家族の必死の判断や、子どもの急変の波をよく理解してくれています。落ち着いたならそれに越したことはない、ためらわずにSOSを出していいんだという安心感を持たせていただきました。
個別性を伝える重要性
参加者の中に、肺が未形成というお子さんがおられました。そのため「酸素飽和度(SpO2)が90あれば十分」という身体のベースラインがあると、主治医との間で話しているそうです。
しかし、一般的な救急対応では「通常と同じように95以上を目指そう」とします。酸素をたくさん投与すると肺が未形成のお子さんのケースでは、かえってガス交換ができなくなり、逆効果になってしまいます。
ここから分かるのは、「主治医の指示をしっかり伝えること」の重要性です。
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一般論としての「正常値」ではなく、我が子にとっての「通常」を伝える。
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「これ以上酸素を上げると逆に危ない」といった、主治医から示される具体的な指示やケアの特徴を伝える。
これを伝えることで、救急隊も「なるほど、この子にはこの対応が必要なんだ」と正確な判断を下すことができます。

お友だちの発作を見て、うちの子とは違う形で「怖い!!」と思ったこともあります。しかしそのお子さんにとっては、それが日常的なこと。
この温度差が、私たち当事者家族と救急隊との間にもあるのだなと気づかされました。
救急隊ができること・家族が伝えるべきこと
緊急時の現場で、救急隊は瞬時に「自分たちに何ができるか」を判断しています。心肺停止の状況であれば気管挿管や点滴確保など、救急車内や現場で行える医療行為の選択肢をフル回転させています。
そのスムーズな判断を支えるのが、「いつもの状態と今の状態、何が違うのか」の明確化です。
講義を振り返って、参加したお母さんからはこんな感想が飛び出しました。
「緊急時は慌てているから、必要のない情報までたくさん伝えてしまっていた。救急隊が知りたい情報は伝えられてなかったと思う。
何を伝えれば、的確に伝わるのかが理解できた研修になりました。」
「肺が未形成で酸素が上がらない状態」なのか、「誤嚥(ごえん)を起こして酸素が上がらない状態」なのかでは、救急隊のとるべき対応は180度異なります。
医療的ケア児に一般論は通用しないからこそ、「うちの子の通常はこれです」と伝えることが、最善の処置を引き出すカギになるのです。
救急隊の方は、搬送した後にその子がどうなったのか(その後の経過)を追うことは、難しいそうです。
こうした講義を通じて、家族と救急隊が互いの視点を共有し、意見交換を行うこと自体が、非常に大きな価値を持っていると実感しました。
まとめ
医療的ケア児の救急要請は、いつだって緊張の連続です。親御さんにとって、我が子の命を守るための決断は重く、孤独を感じる瞬間もあるかもしれません。
講義で学んだポイントを考えておくだけで、いざというときの心の余裕や、救急隊とのコミュニケーションの質は大きく変わってくるはずです。
アンリーシュでは、これからも医療的ケア児者やそのご家族が「孤立せず、安心して暮らせる社会」を目指して、こうした学びや情報を発信していきます。
今日のこの気づきが、どこかの誰かの「もしものとき」の小さなお守りになりますように。

アンリーシュ運営メンバーとして活動。
兄と妹、真ん中に13トリソミーの医療的ケア児あおいを育てる3児の母。
医療的ケア児を育てながらお仕事を。在宅でも出来る活動にチャレンジ中!!
