【Way➕プロジェクト報告】当事者家族が伝える 薬剤業界での講演会活動

選択肢が少ないからと、選ぶことを諦めてきた──。 そんな「声なき声」を「仕方ない」で終わらせたくない。 社会と家族がもっと繋がり、さらに理解し合えることができれば、 医療的ケア児だけでなく、すべての子どもたちの選択肢が広がり、 それぞれが自分らしく未来を描けるはず!!

『Wayプラスプロジェクト』は、社会と当事者家族が互いに一歩踏み出す勇気と、理解し合える場を作ることで、社会と家族を繋ぐ架け橋となり、 すべての子どもたちが、可能性を諦めずに挑戦できるプロジェクトです。

アンリーシュは、『Wayプラスプロジェクト』を通して共に自分らしく生きられる社会を目指し、さまざまな方と活動しています。

Wayプラスプロジェクト

 

昭和大学薬学部での講義

アンリーシュでは定期的に昭和大学薬学部様で、医療的ケア児家族によるお話をさせていただいております。

2025年6月にアンリーシュフレンズのななみちゃんママ、江田純子さんが『小児在宅医療における服薬管理』についての講義をさせていただきました。

江田さんは、お薬に関わるお仕事をされていることもあって、
「お薬の効能が出る部位まで届く過程において、どのような課題があるのか」
「子どもたちがしっかりと薬を服用できるために、薬剤師として何ができるのか」
など、学生達とディスカッションをおこないました。

薬学部学生
ただ知識を伝えるのではなく、相手の思いに寄り添い、傾聴する姿勢の大切さを改めて実感した。今後の実習や将来の医療現場でもこの経験を活かし、ご家族の気持ちに寄り添った対応を心がけていきたい。
薬学部学生
医療人として、どのような関わりが求められるのをよく考える必要があると感じました。貴重なお話しありがとうございました。

これから薬剤のお仕事に従事するであろう皆さまの姿勢に、とても頼もしさを感じる感想ですね。

江田さんによる講義

 

 

薬学部学生・日本薬剤学会との座談会

また、2025年8月にはアンリーシュの金澤と舛井が薬学部の学生6名と、日本薬剤学会小児製剤フォーカスグループの5名の皆さまと座談会を開催いたしました。

「医療的ケア児・難病児の在宅療養における現状と課題 ~服薬の工夫と医薬品開発への期待~」というテーマのもと、舛井がご自身のお子様でアンリーシュフレンズのふうちゃん(次女)といっちゃん(長女)に関するお薬の話をさせていただきました。

座談会の様子

 

 

 

 

医療的ケア児のお薬事情

2人合わせてのお薬の数は、なんと25種類!!
2ヶ月に一度の受診で、まとめて処方してもらっています。
かかりつけ薬局との良好な連携があり、在宅療養の大きな支えになっていると感じています。

湿気やすい薬は、薬局側で乾燥剤と共にナイロン袋で密封し、さらに紙袋に入れる二重包装で渡してくれるため、帰宅後の仕分けが非常に助かっています。
ジェネリック医薬品への変更で薬の名称が変わる際には、混乱しないよう丁寧に説明してくれますし、服用する当事者でもあるいっちゃんにもきちんと説明をしてくださいます。

 

 

専門家からの質問

薬学生や製薬企業研究者から多くの質問が寄せられました。
専門家の方々が当事者の声を大切にしてくださっていることに、感謝の気持ちでいっぱいです。その一部をご紹介します。

専門家
訪問薬剤師は利用していますか?
Rumi
私の住む地域では薬剤師が不足しており、訪問サービスは利用できていません。
もし利用できれば、専門的な視点で服薬状況や保管方法を確認してもらえたり、家族の心身の負担に気づいてもらえたり。看護師とはまた違った形でのサポートが期待できるかもしれないと感じています。
専門家
医薬品の供給が不安定な状況だが、優先的に確保されていると感じることはありますか?
Rumi
これまで供給が止まって困ったという経験はありません。
主治医が「この薬は手に入りにくくなるかもしれないから、少し多めに処方しておくね」といった配慮をしてくださることもあり、私たちが困らないように動いていただけていると感じています。
専門家
薬と経腸栄養剤(ラコール)の投与順序は医師の指示ですか?
Rumi
ふうちゃんが小さい頃は特に吐きやすかったため、まず空腹の状態で薬を投与し、吸収される時間(医師からは約30分と聞いている)を置いてからラコールを注入していました。
吐いてしまった時に、薬が吸収されたか分かりませんでした。追加投与に悩んだ経験から、その順番が定着しました。
医師からの明確な指示ではありません。

 

家族の判断によって、服薬が行われている実態が明らかになりました。
薬によっては食事(栄養剤)との相互作用で吸収が変わるものもあるため、薬剤師が介入して情報提供できる点かもしれないという課題が浮き彫りになり、とても有益な情報交換でした。

 

専門家
薬剤師に求めることはなんですか?
Rumi
私たちは医療的ケア児を何年も子育てしていますが、やはり薬に関してはわからないことも多く、なんとしてでもちゃんとした量を確実にお腹に入れてあげないといけないという想いもあり、薬について多くの不安やストレスを感じている方も多いです。

私たちにとって薬は生活の一部であり、なくてはならないものです。
飲みやすさ、保存のしやすさ、自宅での管理のしやすさ、副作用に関してももちろんですが、生活の中でのこととして、使う側の目線で薬をみてくれる、考えてくれる薬剤師さんや研究者さんが増えてくれたら嬉しいなと思います。

 

 

座談会を終えての感想

他にも「チューブへの詰まりのこと」や「お薬を口から飲むいっちゃんのこと」「医療的ケア児の子育てについての気持ち」など、たくさんのことに興味をもって、質問してくださいました。

当事者家族としても、服用後の嘔吐の件や服用で苦労した件など、様々なことをお伝えすることができたと思います。

Tomoko
薬剤師さんへの想いを教えてください

Rumi
お薬の安定的な供給があるからこそ、子どもたちの「いつもと同じ日常」が保たれています。卸売業者から薬剤師、医療従事者まで、多くの方々の支えに心から感謝しています。

皆さんのおかげで医療的ケアがあっても「これからも一緒に生きていける」という希望が家族にはあります。ちょっとしたお声がけなど気遣いいただける姿勢に心が救われることや不安が軽減することがあります。
寄り添って一緒に悩んだり考えてくださる存在であって欲しいなと思います。

 

 

まとめ

なかなかお話をする機会がない薬剤師さん。
今回の座談会報告を受けて、当事者家族は日常生活でのことなので特段お話しすることもないかなぁと思い、伝えることすらしていない状況もあるのではないかと思いました。
そういったすれ違いをお互いに知ることで、お薬の正しい道が開けるのではと期待が膨らみました。

また、お薬を作っている方達が当事者のことを知ろうという姿勢を見せてくださったことに、とても光を感じることができました。
この座談会を経て、より良いお薬の開発や服用の工夫が社会に広まると嬉しく思います。

tomoko
ライター:tomoko
アンリーシュ運営メンバーとして活動。
兄と妹、真ん中に13トリソミーの医療的ケア児あおいを育てる3児の母。
医療的ケア児を育てながらお仕事を。在宅でも出来る活動にチャレンジ中!!

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