【レポート】日本地域看護学会 第22回 学術集会に参加。医療的ケア児者に必要な支援体制についての考察

8月17日(土)~18日(日)、パシフィコ横浜にて日本地域看護学会 第22回学術集会が開催されました。

この学会では「おたがいさまを基軸にした健康なまちづくり~コミュニテイ・エンパワメントにおける看護職の役割~」をテーマとし、地域連携やコミュニティに関する様々な講演やシンポジウムが開かれていました。

その中で「医療ケアの必要な子どもの生活支援」と題して、医療的ケア児の支援についても活発な議論が行われていました。

この記事では、学会の様子とそこで学んだ事を通して感じた今後の医療的ケア児に必要な支援についてレポートしていきます。

ライター紹介

はじめまして、小林正幸と申します。

私は現在医療的ケア児を育てながら、全国医療的ケア児者支援協議会 親の部会 部会長を勤めています。

全国医療的ケア児者支援協議会は、医療的ケアを必要とする人と家族が、笑って暮らせる日本社会を目指し、政策提言事業やコミュニティづくりを行なっています。

医療的ケア児の家族や支援者が参加する FBグループは当事者、当事者のご両親、医師、看護師、保健師、薬剤師、介護士、相談員、医療と福祉にかかわるさまざまなメンバーが参加し、日々医療的ケアに関する情報交換や家族同士の交流が行われています。

全国 医療的ケア児者支援協議会 親の部会 小林さんと面会し、活動を連携していくことを確認しました

2019年7月10日

日本地域看護学会にて医療的ケアについて取り上げられました

今回、日本地域看護で、医療的ケアについて取り上げていただけるセッションが持たれました。

これはとても革新的なことと思います。セッションの関心は高かったようで満席でした。

関係者の問題意識も高く、解決したいという熱い想いを感じました。

裏を返せばそれだけ未解決の事例を皆様が抱えていることになります。

セッションでは、保健師も、支援のハブになって、行政、事業者、医療、福祉、教育、そして家族をつなげ、医ケア児者支援を実施していこうと語っていました。
 
その通りで、医療的ケア児者の現場には、コーディネーター、保健師、相談員など、相談支援制度が多々あり、保護者だけに負担がかからない仕組み作りが可能なように思います。 
ただ、私が現場にいて感じるのは「保護者と行政がうまくいかない事例」が多いということです。

医療・福祉・教育と多方面からの支援が必要な医療的ケア児に関して、1つの部分だけ解決しても、相互が同時に解決しないと話が進まないと感じています。
 
例えば我が家の場合、息子の計画相談は行われるものの、行政の理解・学習不足を感じ、現状をしのぐだけの状況です。

このような現状を回避するために、将来的にどのような支援体制が必要なのか考察してみました。

医療的ケア児への包括支援の必要性を考える

医療的家族が抱えている課題

私の息子は自立独歩できる医療的ケア児です。以前は重症心身障害児でしたが、成長とともに歩けるようになりました。ただし、全聾でコミュニケーションはほぼ取れません。

医療的ケアとしては、1日6回の注入と浣腸によるガス抜きなどが必要です。

夜、なかなか眠らない(1~4時起きている)事が一番の課題です。

私は仕事もしているため、自分の時間をもてるのは深夜の4時くらいになる事も少なくありません。
 
そんな環境の中、息子への支援が進まない原因は大きく3つあると考えます。

  1. 事業者への支援のインセンティブ不足
  2. 行政が医療的ケア児を十分に理解していない
  3. 当事者に余力がなさすぎる

1.事業者への支援のインセンティブ不足

事業者の多くは、問題を解決したいと考えていますが、現在の国からの補助金などの体制では持続可能な事業が難しい現状があります。

医療的ケア児者は、医療と福祉のサービスが同時に必要となり、その両方を柔軟に提供できる体制を構築するには固定費も変動費も大きくなってしまいます。

安定して事業を継続するためのサポート体制が求められています。

2.行政が医療的ケア児を十分に理解していない

医療的ケア児者を取り巻く環境は今大きく変わってきています。

しかし、国で方針を決めた後に、地方行政でそれを具体化する場面で課題を抱えています。

各地域での対象が少なく、個別性が高いので方針決定しにくく行政の現場に方針が下りてこないのです。

当事者が窮状を訴えても行政担当者では手に余る状況になってしまっています。

3.当事者に余力がなさすぎる

当事者家族は母は医ケアに、父は母が働けない分仕事に精一杯で行政に支援をお願いする余力がありません。

事業所や各支援者とも、制度がない中での改善交渉よりも、目先の問題の解決を図ることにことに精一杯になってしまっています。

よって行政に現状が伝わっておらず「そんな声は出ていない」とも言われてしまう事があります。

医療的ケア児者を時系列で支援できる体制作り

そういう現状から、地方行政は個別性の高い医療的ケア児者の包括的な支援体制として、当事者と家族を「継続的な支援」をできる担当者の配置体制が必要だと考えています。

継続的な支援とは、以下のようなイメージです。

継続的な支援体制
  • 医療的ケア児の出産
  • 在宅医療的ケアの開始
  • 教育を受ける
  • 保護者から自立する
     (①健常者と同じレベルの就業から、
      ②支援の必要な就業、
      ③グループホームなどでの地域での生活確立、
      ④施設入所)
  • 自己実現できる
      (虐待されず、地域で経済的にも文化的にも満たされた環境で生活を送る事ができる)

この「継続的な支援」体制の担当者の調整の難易度は相当高いと思います。
多分野にわたる同時利害調整や具体的な支援体制の構築。
また時系列での知見も必要ですが、件数が少ないことから蓄積しにくい。地域行政を超えて他地域の担当者と情報共有し、具体化のための手法の実践研究が重ねて必要です。 

このような体制構築のため、私たち当事者がまずできることは、ごく一部でも、現状をまとめて、立法・行政に響く主張を論理的に行っていくことだと実感しています。

最後に

これまで述べたことを実現するために、自分ができることは、医療的ケア児者の状況を多面的、且つ時系列で整理し、児者と保護者の将来を見据えて、支援の必要性を立法・行政の関係者にお伝えしていくことだと、今回の学会に参加して改めて痛感しました。

今後も、私は、永田町こども未来会議や学術集会等へ当事者として、医療的ケア児者とその家族の現状を伝え、新しい支援体制の構築に向けて活動を続けていきます。
 
引続き、皆様のご支援をよろしくお願いいたします。

医療的ケア児 の就学を学ぶ「永田町子ども未来会議」

2019年2月15日