【医療的ケア児と理学療法】子どものためのリハビリテーションとは?

こんにちは、アンリーシュライターのこずえです。

今回は、理学療法士としてたくさんの子どもたちと関わってきた私が、理学療法についてまとめました。

色々な理由でお子さんが理学療法を始めるとき、お医者さんから「お子さんの発達が伸びるようにリハビリを始めましょう」という感じの説明を受けることが多く、理学療法って何?ということまで知っている方は少ないのではないでしょうか?

この記事を通して、これから始める方はもちろん、今受けている方も、理学療法についてもっと知ってもらえたら嬉しいです。

 

理学療法とは

理学療法とは

理学療法とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう

                (理学療法士及び作業療法士法 第二条)

 

理学療法の対象者は、主に起き上がる、座る、立ち上がる、歩くなどの運動機能が低下した人ですが、その原因や年齢は問いません。低下した運動機能を回復することで、日常生活を改善し、最終的にはQOL(Quolity of LIfe 生活や人生の質)の向上を目指します。

イラストのように、病院のリハビリ室でストレッチやマッサージ、筋力トレーニングを行うこと、平行棒で歩く練習をすることというイメージがあるかもしれませんが、これは理学療法の一部です。

病気になった直後、ケガをした直後の急性期から、自宅に戻った後の生活期まで、その時期に必要なプログラムを医師や看護師、作業療法士などの他職種と協力しながら実施します。

最近では、介護予防や健康増進の取り組みに参加することも広がってきています。また、スポーツ分野ではケガ等で休養していた選手の競技復帰や再発予防のサポートや、効果的なトレーニング方法の指導やコンディショニングを行います。

このように、理学療法といっても、様々な内容があります。

子どもの理学療法とは

では、子どもの理学療法とはどんなものでしょうか?

子どもの場合は、中途障害(成長の過程で事故や病気等で障害を負うこと)を除いては、運動機能を回復するのではなく、その子の持っている力を伸ばしていく、発達を支援するということを目指します。

一人ひとりのお子さんの状況に合わせて目標を設定し、運動発達を伸ばしていくために様々なプログラムを行います。

大人の場合と違って、なんのために理学療法をやっているのか分からないお子さんもたくさんいます。遊びながら、楽しく行うことも大切なポイントです。

例えば…足に麻痺があるお子さんの場合

足に麻痺があって一人で立つことが難しいお子さんの場合、まずは立つことを経験してもらうことから始めます。

どこを支えてあげたら嫌がらずに立てるのか、どのくらいの高さのテーブルにつかまったら遊びながら立ちやすいのか、などを見て、家庭生活のどの場面だったら取り入れやすいかを保護者の方と相談します。

必要であれば整形外科医と相談して装具の検討もします。支えてもらったり、つかまったりすることで立つことができるようになってきたら、少しずつその支えを減らすなどして次のステップに入ります。

保育園などに通っているのであれば、園の先生にも介助の方法や気を付けてほしいことなどを伝える場合もあります。

例えば…重い障害があるお子さんの場合

重い障害があって自分で身体を支えることや動かすことが難しいお子さんの場合では、手や足の関節がかたくならないように動かすことが理学療法だと思われがちですが、それだけではありません。

運動の発達と認知の発達は相互に影響を与えるので、身体の障害が重く、運動機能が発達していくことが難しいと考えられる場合であっても、認知の発達を促すために座る姿勢をとることはとても大切です。

自分の周囲で何が起きているかを見ること、自分の手で物を触ることなどの経験を積んでいくための準備として、色々な姿勢をとることに慣れ、自分の身体を知り、外部からの情報を受け取る準備をしておくことも理学療法の大切な役割です。

また、必要な場合は、呼吸を楽にすることやたんを出しやすくすることを目的とした呼吸理学療法も行います。

例えば…発達がゆっくりなお子さんの場合

障害ではなくても、発達がゆっくりなお子さんに対しても理学療法を行います。

心臓の病気などで運動発達がゆっくりな場合に理学療法が行われることもあります。そのお子さんに合わせた最小限のサポートをすることで次のステップへの足掛かりを作ります。

 

これらは比較的年齢の小さなお子さんに対する理学療法の例ですが、成長に合わせてさらに様々な観点からアプローチを行います。

全体を通して言えることは、理学療法を行う時間だけで子どもの運動発達を促進することは難しく、生活全体をどう整えていくかを考える必要があるということです。

また、運動機能を改善することだけに目を向けず、その子が社会で生きていくために何が大切かということを小さな頃から考えておくことが必要です。

どんな場所で受けられるの? 

子どもが理学療法を受けられる場所としては

  • 小児病院
  • 療育センター、発達センター
  • 児童発達支援センター
  • 地域の総合病院
  • 地域のクリニック
  • 訪問リハビリテーション     

など様々で、地域によっても差があります。

また、入所、入院などをして、数週間から数か月間集中的に理学療法などのリハビリテーションを行っている施設や病院もあります。
 

どうしたら受けられるの?

理学療法などのリハビリテーションは医師の指示が必要です。まずは主治医に相談してください。主治医がいる病院以外で理学療法を受けたい場合も、一度主治医に相談した方がよいでしょう。

費用はかかるの?

理学療法などのリハビリテーションは、医師の指示のもと、医療保険を利用して行うものなので、「子ども医療費助成制度」の対象となります。自治体ごとに定められた年齢までは無料になります。(一部自治体では所得制限や一部自己負担が必要な場合あり)

また、子ども医療費助成制度の対象年齢を過ぎた場合でも、身体障害者手帳所持者に対する医療費助成の制度や小児慢性特定疾病の医療費助成などの助成があります。

詳細は各市区町村にお問い合わせください。

いつまで受けられるの?

何歳まで、などの決まりは特にありませんが、それぞれの施設で、小学校に上がるまで、18歳まで、歩行できるまで、などの終了の基準が設けられている場合が多いようです。

完全に終了しても大丈夫な場合もあれば、生涯何らかの形で継続した方が望ましい場合もあります。継続した方がいい場合は、次の医療機関や訪問リハビリテーションなどを紹介してもらいましょう。

よくある疑問に答えます!

私は地域の総合病院や発達センターなどで子どもの理学療法に携わってきましたが、今は療育現場で仕事をしていて直接的な理学療法の提供はしていません。理学療法の現場から少しだけ離れたところにいる私が、よくある疑問に答えます!(あくまでも個人的な見解です)

Q1.  どれくらい通ったらいいの?

A1.  最適な頻度というのは、お子さんによっても違うし、同じお子さんでも時期によって違います。例えば、手術直後、ボトックス治療後などは集中して通うメリットも大きいですし、お子さん自身が達成したい課題があるときも多く通うタイミングだと思います。

ただ、たくさん通えば通うほどよくなる、ということはありません。お子さんの運動機能を伸ばす、二次的な障害を予防するには、「日常生活の中でどれだけ使うか、習慣にできるか」、「子ども本人が自分でやりたいと思う環境をどれだけ整えることができるか」に尽きます。

普段と違う環境で、やりたくない練習をやってもできるようにはならないのです。

 

Q2. 〇〇法、△△アプローチって効果あるの?

A.2 理学療法の世界には○○法、△△アプローチというものがたくさん存在します。エビデンス(科学的・統計学的に根拠があること)としては厳しいものもありますが、個人的には、その目的をしっかり理解して選ぶのであればいいと思います。

○○法、と聞くとなんだか特別なことをやってもらっている気がする、有名だから効く気がするというだけにならないように、偏りすぎないように、ということは気に留めておくとよいのではないでしょうか。

 

Q3. 近くの一般病院だけでは心配…やっぱり小児専門病院でもみてもらいたい!

A3. 地域の病院だからこそわかる地域の情報もあります。小児専門病院だからこそ、多くの子ども達の経過を知っているという強さもあります。通園施設や訪問リハだからこそ、生活に根差したプログラムを立てられることもあります。

それぞれがそれぞれの強みがあり、弱みがあるので、それを理解して使い分けることが大切だと思います。

ただし、それぞれの施設の担当者間で意見の相違があった場合にどうするのかを考えておくこと、子どもたちの普段の生活よりもリハビリを受けさせることが優先されないように気を付けることは忘れないでほしいと思います。

終わりに

いかがでしたか?少しは理学療法について知っていただけたでしょうか?

リハビリというと、「訓練」とか「頑張らなければいけないもの」というイメージがあるかもしれません。でも、病気があるから、障害があるから、他の子どもよりも頑張らなければならないなんておかしいですよね。

子どもたちの普通の生活を大切にしながら、その子の力を伸ばす、可能性を広げることが理学療法の役割です。

私もまだまだ実践できているとは言えませんが、子どもたちの笑顔のために精進します!!

出典

 

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